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要するに、現場の担当者は、毎日、非常に頭の痛い業務に追われて、将来のことを考えて布石を打てるような状況ではないんだということからくる当然の期待だろうと思います。

小川 そうですね。CINCPACFLTだけでなく、方々で、「あなたがたトラックIIの役割、使命は非常に重要だ」と言われました。

ガイドラインについてはさっきの船舶検査の問題が積み残されています。

それから、バイラテラル・プランニングの問題では、日本側において(防衛庁・外務省以外の)他省庁の組み込みがなかなかうまくいかず、防衛庁、外務省以外の省庁がいろいろなことを言うばかりで議論に乗ってこない。例えば、厚生省とか運輸省ですね。それで、先に話が進まないものですから、アメリカ側が、いざというときの計画に日本をplan inできないじゃないかといらいらしている。「半島有事になった場合には、日米同盟はこれではおしまいになっちゃうじゃないか」というような指摘もありました。

それからTMDについては日米でいま一番必要なのは、ポリティカル・フレーム・ワークを作ることではないのか、という指摘がありました。(TMDについては別途議論します)

タンジーさんとの意見交換についてはこのぐらいにして、タンジーさんと会う前のCINCPACFLTの幕僚とのラウンドテーブルのディスカッションについての感想はいかがですか。

 

15:クリントンの曖昧性戦略が幕僚レベルまで行き届いてしまっている

 

川村 正直言って、これにはちょっと失望しました。いま、海上自衛隊の若い幹部の教育が必要だという話しがでましたが、わたしは、CINCPACFLTの幕僚の教育も必要ではないかと感じたのですよ。いわゆるクリントン政権の曖昧性戦略がCINCPACFLTの幕僚のレベルまで、完全に行き届いてしまっているという感じがしました。

こちら側の「台湾海峡危機は日本のシーレーンの問題でもあるのだ」という発言に対して、CINCPACFLTの計画幕僚、すなわち作戦計画の中枢になるような人が「中国がシーレーンを破壊すると本気で考えているのか?」などと聞いてくるわけです。

もちろん、彼らとしても「中国がシーレーンを破壊することは、あるのかも知れない」と思っているかもしれませんが、とにかく、そういう質問をしてきた。彼らは「能力的に見て、中国がシーレーンを破壊することは、あり得ないだろう」と考えているのでしょう。

けれども、もし、中台危機の時に、「そのようなことはないだろう」との発想が、「アメリカは台湾のための介入はしません」という間違ったシグナルを与えてしまうことがあるかも知れない。

 

 

 

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