13:徳川家康に学べ
山本 徳川家康が、織田信長と秀吉の時代を生きてきた時に、彼らと関係をもつことが大変必要なんだというときに、「じゃあなぜだ?」と言ってしまえばおしまいなんですが、徳川の家臣はみんなそれがちゃんとわかっているからなにもいわずに家康についてきたわけです。日米関係にも、それと似たところがあるんです。だから、これをどうやって認識し直すかということは、今後の日米関係にとって根本的であり、非常に大事な問題だと思います。
小川 歴史小説には、「その時、家康はこう考えた」と書いてありますが、それは歴史小説だからそうなっているわけで、われわれは今の時代を生き延びていかなければいけないわけですね。
さて、「アメリカ側の問題意識は何ですか」と聞いたら、真っ先に指摘があったのが、「若いオフィサーが日米の海軍関係を理解していなくなっている」ということでした。これはやはり一番重要な問題と捉えられていますね。この点はタンジーさんと大分長く論じました。
二番目は調達の問題で、例えばさっき話が出たMPAですね。川村所長からも指摘がありましたけれども、日本とアメリカの関係がどんどん共同開発から離れていってしまっている。こういうような動きが心配だということですね。
三つ目は予算の問題でした。人件費がどんどん上がっているものですから、自衛隊が自由に使える金がほとんどなくなってきている。このままいくと、2015年とか2020年になったら、自由裁量で使える部分というのがゼロになってしまう。「そうなったら、どうするんですか?」「防衛予算をGNPの3%にしたり5%にしたりするんですか?」「だけど明らかな脅威がないのにそういうことができるんですか?」「予算が硬直化しているのは、要するに官僚的発想の結果ではないのですか?」という質問が矢継ぎばやにありました。もう、質問自体が答えになっているので、答える必要もない質問でした。最後には「このままでいくと、装備の面からも、たとえば、海上自衛隊にフレキシビリティがなくなってしまう」「そうすると、最後にはフォース・ストラクチャーまで変化せざるを得なくなるよ」と言う議論になりました。
14:21世紀の日米関係構築はトラックIIでの研究に期待
川村 そういう意味で、現在岡崎研究所と国際経済政策調査会がパシフィック・フォーラムと協力して企画している日米の安全保障の専門家を集めての研究プロジェクトは、非常に意味があると思います。今回は、小川さんが、各訪問先でこの新プロジェクトについて紹介しましたが、このような民間同士によるトラックIIでの研究に期待するところが大いにあるように見受けられました。3
3 岡崎研究所、国際経済政策調査会、Pacific Forum CSISの3者はかつて「日米安全保障関係の再構築プロジェクト」を実施した(1995-1997)。これを通称「日米同盟プロジェクト」と呼び、成果はhttp://www.glocomnet.or.jp/okazaki-inst/ に掲載されている。ここで話題となったプロジェクトは、Visionに関して論ずる「新日米同盟プロジェクト」とでも呼ぶべきもので、現在企画中です。この他に、岡崎研究所、国際経済政策調査会は共同して、ワシントンのライシャワーセンター(SAIS)と別個のよりPragmaticな「新日米同盟プロジェクト」を企画している。ふたつのプロジェクトとも、2000年6月開始で、米新政権が発足する2001年1月頃までに結論を出す予定である。