こういう命題を与えて、学生にじっくりとスタディさせ、そこで振り返ってみれば、「やはりわれわれはアメリカと協力しなければいけないのだ」、「それがわれわれが21世紀に生きていくために必要なんだ」ということを、自らの努力で発見させなければいけないと思うんです。いま、そういうことがおろそかにされていると思いますね。「日米関係が重要なんだ」と合言葉じゃあるまいし、繰り返し言っているうちに念仏みたいになっている嫌いもありますが、はっきり言えば、日米同盟は仲良しクラブじゃないんだということです。
国と国との間には、ことと場合によったら、「それを言ったらおしまいよ」ということもあるでしょう。これは人間と人間との間でもありますね。
わたしは、将来の指導者となる若い幹部が、本当に骨のところから、「なぜアメリカアメリカと協力しなければいけないか」、「協力のコンポーネントとして、なぜ海上自衛隊が米海軍と密接に協力しなければいけないのか」ということが自らのなかから涌き出てくるような教育をしていく必要があると思います。
わたしはかつて幹部学校の校長をやっておりましたので、その時には、若い人達にいろいろと話をしておりましたが、どうやらいま、日米関係は原点にたち帰って議論をしなければならないようであります。あるいは、江田島の幹部候補生学校でも、陸海空のそれぞれの学校、幹部学校で、根本的なところを教育し、日米は決して仲良しクラブなどではなく、日本は「生きていくためにアメリカと一緒にやらなければいけないんだ」ということを教育する必要があると思いました。
小川 タンジーさんが何度も繰り返し言っていましたが、「いま日米両海軍の関係は最高に良い。もう50年近くつき合っているが、いまが多分最高に良いと思う。けれども、そのような日米関係を作り上げた世代と、いまそれに乗っかって動かしている若い世代は違う。若い世代が、日米同盟が大切なんだということを自分の頭で考えて納得しない限りは、将来の関係は駄目になりうるのだ」という危惧でしたね。
11:自分の頭で考える
さらにタンジーさんが言っていたのは、「最近の海上自衛隊の若い人は優秀だ。ものすごく頭も切れる。しかし、優秀だが、どんどん官僚化している」ということです。ですから、日米関係は、しばらくは惰性で行くと思うんですけれども、やはり自分の頭で考えて納得したことでないと国民を説得できません。自衛隊を全部合わせても日本国家の1%にも満たない集団ですから、今後のことを考えると、やはり自分で考えて、その意見を発表していかなければ駄目ですね。財政が逼迫していく民主主義国家のなかで、軍隊が存在していくには、自衛隊自身が目的意識を明確に持ち、頭をつかってその存在意義をアピールしていくしかないのです。日米関係の意味付けについては、どうやらアメリカもやろうとしていますから、日本も同じようにしなければいけないと思います。