神戸がいま「米軍艦船入国拒否」と言っていますが、有事になって、他の港に波及したら日本政府はお手上げですね。ガイドライン法では、日本政府は米国政府に協力するとか、「米軍艦船を支援します」といっているけれども、実際には協力できないことになる。「首相以下政府は協力したいし、法律には協力すると書いてありますが、実は地方自治体が反対しているので、ご協力できないのです」と言ったときに、米国の議会や世論が納得するとはとうてい思えない。これは、港だけでなく、空港や医療施設についても同様ですが、ひとことで言うと、国内施設の利用問題ですね。
このほかに、米軍に対する補給の問題があります。さらに、捜索救難活動(search and rescue operation)についても、今度出来た法律にはさまざまな欠陥がある。これらの法律はよほど頭がいい官僚が作ったものと見えて、「集団的自衛権に抵触するのではないか」という野党の疑義に対して言い訳ができるように作ってありますが、その場になると、「やる」と書いてあることが、いろいろと理屈をつけて、「やらないでもいい」ように書いてあることが大変多いんです。
ガイドライン関連法を実際によく検討して見ると、「集団的自衛権に抵触してはならない」という前提がネックになっている。
小川 ガイドライン関連法は、日本国民に対しては有事の際、「これこれそういう制約がつけてありますから危ないことはなにもしません」と言い、米国に対しては、有事の際に「こんなにいろいろなことをします」と言っているのですが、実際には法律上の制約があるので、そのときになると「家庭の事情でこれもできません、あれもできません」と言い訳することになる。この法律は、事が起こらなければなんでもないのですが、いざというときには、後世の日本人から「この法律を作った人達は一体何を考えていたんだろう」と指弾されても仕方ない法律です。
山本 ガイドライン関連法は、ないよりはあったほうがいいんですよ。しかし、これに満足せずに、実効のある協力ができるような法律に変えなければいけない。訂正しなければいけないと思います。
それと同時に、政府の責任者は有事法制に取り組まなければなりません。今は日常的な課題で頭がいっぱいかもしれませんが、「事終われり」と思っているガイドライン関連法だって欠陥だらけなのですから、これからやっていかなければいけないことは多いと思います。
10:単なる合言葉では、日米関係を担う次の世代の教育はできない
それからさっき指摘がありました、21世紀の日米関係を担う次の世代の教育のことですが、タンジーさんは米側で日米同盟の風化が始まっていると言われましたが、これは、海上自衛隊でも同様です。これは、われわれの目の黒いうちに、一回振り返って原点に戻り考えてみる必要があると思います。
自衛隊の幹部学校でも、「なぜ日米協力が必要なのか」という根っこに踏み戻って、歴史的な時勢の流れの中で、「なぜわれわれはアメリカと協力しなければいけないのか」、「われわれ日本が繁栄するためには、どうして日米協力が必要なのか」という自問自答をやらねば駄目です。