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7:調達問題

 

そしてタンジー氏が特に強調したのは、より有効で現実的な日米協力をどうしたら構築していくことができるかということです。

例えば彼が例として挙げましたのが海上自衛隊のP-3C対潜哨戒機の後継機(MPA)の問題です。日米間で、将来この問題にどう取り組むか、また、開発等についての見解がまとまっていない。こういう具体的な問題をひとつひとつ解決していくことが大事であると言っていました。

 

8:最大の問題は、日米の若い世代が同盟の歴史を知らないこと

 

それから、21世紀の日米同盟を担う次の世代の育成について触れまして、たとえば海上自衛隊と米海軍について言えば、「若い人達に、日米の海軍協力が日米関係の中核をなしていることをよく理解させる必要がある。そういうことを理解した指導者を育てていくことが大事なんだ」、ということを指摘しておりました。

小川 タンジーさんの話は、「アメリカの若いオフィサーに限ってみると」という指摘でしたが、世代交替によって、日米両国海軍の関係がこんなに良いことがいかに素晴らしいかということを知らない人が増えてきた。そして、日米の関係が過去どういう経緯で育まれてきたのかということを知らない世代が指導的立場に立つ日が近づいていると言っていたのが印象的でした。タンジーさんは、将来において、歴史を知らないことからもたらされる日米の悲劇を心配しておりまして、アメリカの海軍大学に働きかけて、若い学生たちを啓蒙するプログラムを作らせていると言っておられました。憂えるだけでなく、行動で示すところが、タンジーさんらしかったですね。

 

9:「ガイドラインは決着した」と思うのは錯覚

 

山本 いま川村さんが最初に言った「神環保」や「思いやり予算」は、当面の重要課題と言ってよいでしょう。これは、政治家が解決すべき問題ですが、集団的自衛権で制約を受けるような大げさな問題ではないのですから、とにかく早く解決しなければならない。

しかし、そのことで担当者の頭の中がいっぱいになってしまい、将来やらなければいけないところに頭が向いていないと小川さんが指摘されましたが、それは困ったことだと思います。目先の問題とは別に、われわれは、将来を考えなければならないからです。

いま、多くの人が「ガイドラインは決着した」と思っているようですが、実際はそうでない。タンジーさんがちらっと触れましたけれども、「神戸の問題」などが出ている。これは、米軍艦船が親善訪問をしようとしても、地元自治体が認めないという問題ですね。神戸の事例はひとつの例ですが、この根っこには、日本政府が有事の際に米軍に対してサポートをしようとしたときに、地方公共団体が港湾使用を拒否できるという仕組みがあり、これが、今回浮き彫りになったということでしょう。実際に法律をよく見てみると、米軍艦船が神戸港を使えるかどうか権限を握っているのは、地方の知事だとか、地方自治体の長なのですから、国に強制する権限がない。

 

 

 

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