要するに、CINCPACFLTの幕僚は、ほとんど毎日の業務をこうした日々の問題で忙殺されている。だから、将来のアジア太平洋の平和と安定であるとか、日米同盟の将来というような、もっと大事なことに手がつけられない。このことについて、タンジーさんは、「だから、今後日米の安全保障協力の将来が非常に心配でならない」と言っていました。
5:青写真を描いている時間がない
小川 日本の外務省などに聞きますと、担当者の8割ぐらいの時間を食っているのがそういう日々の話であって、本当は将来に向けてビルディングを建てなければいけないんだけれども、青写真を描いている時間がないんだ、と言っています。今回は、ハワイでも全く同じ話を聞いたわけです。
6:ガイドライン関連法も穴だらけ
川村 日本の国内でもそうですが、あるいはアメリカの国内の対日政策に関わる人達と話してみますと、「いちおうガイドライン関連法が成立したので、これでよしよし、一息ついた」という感じが拭えないんです。でも、実はこれはひとつつひとつ検討してみると、大変な問題がまだ残っています。実際に有事になった場合に、日本が本当に有効な協力ができるかというと、まさに心寒いものがあると言わざるを得ない。2
したがって、「これでもって良し」とするのではなく、まさに、これからは、これを改定していくような作業に早速取りかからなければならないと思います。船舶検査の問題もまだ棚上げのままです。そして、最終的には、日本の集団的自衛権の問題に触れない限り、根本的な問題はどうしても解決しないだろうと思います。
2 参考文献として、小川彰 「日本の立場からみた日米ガイドラインの見直し」『日本學』、第18輯、1999年12月31日発行、147-171頁があります。『日本學』は、韓国東國大學校日本學研究所(孔魯明所長)発行の学術雑誌で、日本語と韓国語の論文を掲載しています。この論文は日本語で書かれています。『日本學』の発行は12月末でしたが、孔魯明先生(元外務部長官)からの依頼で、小川が原稿を郵送したのは1999年8月30日でした。ですから、9月以降の進展については書かれていません。先方からの依頼は、「日本の立場からみた日米ガイドラインの見直し」について書くようにとのことでした。この論文は和文400字40枚ありますが、ガイドラインに関する韓国の識者の理解を深めることに主眼をおき、脚注を豊富にして啓蒙的にいたしました。これは、韓国の研究者になるべく原典にあたっていただきたいと考えたからです。全文が http://www.glocomnet.or.jp/okazaki-inst/ に掲載されています。