3:「シンカンポ」問題
実は、わたしも、日米関係については、まさにその通りだと思いますし、以下の話を聞いていただければ、皆さんも全くその通だとお思いになるかと思いますが、現在、神奈川県の厚木基地の隣にある産業廃棄物焼却場の問題が日米関係を大きく損ねているのです。この焼却場が、許容量の何十倍といわれるダイオキシンを発出させているのですが、その煙が、厚木基地内の米軍の宿舎を直撃している。この産業廃棄物焼却場は民間の会社で、かつて「神奈川環境保全」云々という名称の看板をかかげていたことから、関係者の間では、この問題は「シンカンポ」と呼ばれています。
わたしも現場を見てきましたが、前方展開している米軍とその家族を犠牲にした形になっており、同盟国として放置できない、なんともひどい話です。日本の現在の司法制度は、改善を実施中の業者に法律違反だからと言って操業中止命令を出せる形にはなっていません。その上、日本では法律を作るのに何年もかかる。地元の知事も市長も腰が引けてしまっていて、この問題に積極的に取り組もうという姿勢が見られない。
そこで、「操業改善命令は出しました」「しかし、一向に改善されません」「操業停止命令は出せません」ということでありまして、アメリカから見れば全然事態が進展していない状況です。話を聞けば10年越しの懸案事項だそうですが、最近になって、この問題がクローズアップされて、ワシントンでも毎日どうなったか心配している。CINCPACFLTでもかなりの時間をこの問題のために割いているとのことでした。
小川 日米同盟に関するワシントンの苛立ちは、今回、CINCPACFLTだけでなく、Pacific Forum CSISでも感じたことですが、今年は去年までとはちょっと違うなという印象を受けました。なぜ、アメリカが苛立つかというと、やらなきゃならないことがわかっているのに、日本がやるべきことをやろうとしないからですね。厚木の問題ひとつとっても、アメリカの不満は、「どうしてもっと迅速にダイオキシンを規制する法律をつくれないんだ」とか、「権限が分散しているにしても、県知事なり、市長なり、国家議員なり、政治家がもっとリーダーシップを発揮しないのか」という不満ですね。
4:いわゆる「思いやり予算」(Host Nation Support)削減問題
川村 それに加えて、最近の日米安保定期協議で、初めて取り上げられた、いわゆる「思いやり予算」(Host Nation Support)の削減問題があります。この実態を全く表していない「思いやり予算」というネーミングは完全な失敗ですが、マスコミでも議論されていますから、ここでは詳しい話は省略します。1
1 在日米軍駐留経費の日本側負担分については、特別協定が原則5年ごとの改定期を2001年3月に迎えるため、改定作業が進められています。日本国内の一部から、改定案として、日本の財政事情を勘案して、これを削減してはどうかとの意見が出ています。これに対する反論としては、岡崎久彦『「思いやり予算」は日本の金看板』(日本語は2月15日付産経新聞、英語は22日付The Japan Times掲載)があります。要旨は、日本がアメリカ議会などから評価を受けている唯一の金看板が、在日米軍駐留経費の日本側負担分である。政治家は近視眼的判断をなすべきではないという内容です。日本語と英語の全文をhttp://www.glocomnet.or.jp/okazaki-inst/で閲覧できます。