そうしましたら、まさに「群島水域の自由航行の問題」に関する会議をSEAPOLが企画しているという話が、1999年春でしたか、SEAPOL代表のフランシス・ライ博士から飛びこんで参りました。
その時、とっさに思ったのは、「これは、アジア人だけの会議にしては駄目だ。この会議には海洋の主たるユーザーであるアメリカ海軍を呼ばなければ全然意味がない」ということです。これは、前年にハワイにいっていたからわかったことなのです。
そこで、「米海軍を会議に呼べ」としつこく言ったわけです。主催者であるSEAPOL代表にそれを働きかけると同時に、私どもでも太平洋艦隊のほうへ連絡を取りまして、「この会議は重要だから、絶対に代表を出さなくては駄目ですよ」と言い続けた。それが図らずも実現したのが、1999年11月のマニラ会議だったわけです。
海洋の主たる使用者であるアメリカの海軍(弁護士)が出席したのは、20年の歴史を持つSEAPOLの会議で史上初めてではなかったかと思います。アメリカの学者の先生方はみえていたと思いますが、実務者あるいは実際の使用者であるアメリカ海軍が出てきたのはおそらく初めてでした。
そして、SEAPOLのフランシス・ライ代表と、それだけ親しくなったというのも、この事業の一環として1998年12月にアジアの有識者を東京に招いて意見交換をしたからだと思います。あとになってわかるのですが、一連の事業がひとつひとつ飛び石のようになって成果をもたらしている。これはやはりこのプロジェクトが連綿として続いているひとつの証左だろうと思います。
これはひとつの例でございますが、それでは今年1年何をやったかということを皆さんに思い出していただきたいと思います。
第1回研究委員会-A (1999-6-15)
山内康英氏「日本の海洋環境モニタリングの現状と問題点」
第1回研究委員会は、6月15日に国際大学の山内先生をおまねきして、「日本の海洋環境とモニタリングの現状と問題点」についてうかがいました(73〜90頁参照)。海洋のモニタリングが縦割り行政の弊害をもろにこうむっているとのお話でしたが、その中でも特に先生のおっしゃったことで印象に残っていますのが、海洋の環境問題は三つあるということです。
1) 産業廃棄物の環境に対する影響評価。
2) 産業の利用から生じる沿岸変化の緩和、
「ミチゲーション」という言葉を使われましたが、河川の公害と浸食の問題や閉鎖された海域等に対する海水の汚染の問題等について、
3) 油流出等の突発的事故への対処。ナホトカ号の事故の例が紹介されました。
かつては、海の安全基準はしっかりした保険から締め付けが行なわれていたのが、自由競争が行われるようになって、保険もだいぶダンピングになって誰でも入れるようになった関係で、昔みたいにきつい条件を満たさなければ保険に入れないということがなくなったので、その弊害がいま海運のマーケットにも現れて混乱を招いているという紹介がありました。