セイリングボートを用いて数週間の航海で、音響、目視観察、写真撮影及び海洋観測データを収集し、研究室に持ち帰り長期にわたって解析を行っている。3名の研究生によって、ホワイトヘッド博士の指導によりマッコウクジラやキタトックリクジラの社会構造、資源遺伝学、潜水行動、分布及び資源生物学の研究が進められている。潜水行動を解明するために、Time-Depth Recorder (TDR)/VHF ラジオタグを用いて研究が進められている。このプロジェクトにおいて、TDRラジオタグによる潜水行動の解析を担当しているのはDr.Robin W.BaidとDr.Sascha Hookerである。これまでにTDRラジオタグをシャチ、マッコウクジラ及びキタトックリクジラにサクションカップにより装着し潜水行動に関する貴重な情報を得ている。長期間の装着は望めないが、リアルタイムで情報が得られることから、潜水行動を解析するには有効な方法と言える。TDR自体は、極めて小型軽量化が進んでいる。タグの大半は浮力体が占めている。初期の頃は大型種に試みられていたが、現在では、セッパリイルカやマダライルカといった小型種にも試みられている。装着にピン方式を採用しない理由は、鯨体を傷つけないというポリシーによるものである。上述しているように短期間の調査航海中に多種多様な情報を収集する調査体制では、長期間装着が必要ないことからもサクションカップを採用している。
4 有効装着方法について (ピン打ち込み式とサクションカップ式)
本委員会では有効装着法を検討している。オレゴン大学における研究ではサテライトタグでピン打ち込み式が、ダルハージー大学における研究ではでサクションカップ式が用いられている。現在用いられているタグの重量は、ほぼ同じである。(図1参照)。いずれも、遊泳する鯨への装着は60ポンド程度のクロスボーを用いて、5mから15mの射程範囲で行っている。装着による衝突の機材破損はないと考えられている。
サテライトタグはアンテナが水面にでないと送信できないし、またアンテナの角度が悪ければ受信できない。このために水面上におけるアンテナ姿勢が発信精度に大きく影響する。これまでに、曳航式と固定式装着が試みられているが、主に固定式装着が採用されている。これは発信精度の点で、固定式より曳航式の方が浮上時のアンテナ姿勢が不安定なためである。装着時にアンテナの姿勢が限定される固定式は、発信も受信もできない状況が懸念されるが、有効な発信・受信状況で得ることも期待できる。現在、シロナガスクジラ85個体及びザトウクジラ69個体に固定装着されていることからも伺える。