このプログラムの首席研究者であるDr.Bruce Mateは、海産哺乳類のためのサテライトタグを開発し、ホッキョクセミクジラ、マナティー、コククジラ、シロナガスクジラ、ザトウクジラ、セミクジラ、バンドウイルカ及びヒレナガゴンドウに装着し長期間の追跡に成功している。このサテライトタグは、位置情報共に、毎秒単位で水温、水深情報を連続し収集できるように設計されている。これらの情報のデータベースは索餌、子育て、繁殖及び回遊のための生息場所を解明するために用いられている。現在、北半球における北極域から亜熱帯水域まで範囲を追跡できるシステムとなっている。
現在サテライトタグの大きさは直径1.9cmの長さ23cmで、鯨体に固定し装着するものである。鯨類に装着し長期間追跡できるものとしては、最も軽量・小型のものである。シロナガスクジラに装着し247日間以上48000回送信しつづけた実績を持っている。繁殖から索餌回遊を周年追跡することが重要であり、最新の衛星監視ラジオタグでも、1年以上発信し続けるエネルギーの開発や発信状況を左右する装着は、主要な問題として残っている。
現在、85個体のシロナガスクジラに装着しこれまでの結果よりも好結果を継続し得ている。また69個体のザトウクジラに装着し、そのいくつかは5ヶ月以上送信を続けている。これまでのタグと比べ寿命が延びたことから、索餌及び繁殖における回遊ルートや移動に関する貴重な情報を得る結果となった。
長期間装着することから、装着方法はピンを鯨体に打ち込む装着方法が採用されている。固定装着の場合、タグのアンテナの角度が水面に垂直でないと発信精度が著しく落ちることやアンテナが水面上に出なければ送信できないことから、装着の部位や固定状況が発信に大きく影響する。そのために、多くの個体に装着しているにもかかわらず、得られる情報が少ない結果となっている。
Dalhousie Whale Research
力ナダダルハージー大学における鯨類研究は、Program for the analysis of social structure (SOCPROG)のために進められている。首席研究者であるハル・ホワイトヘッド博士の研究は、主にマッコウクジラやキタトックリクジラの行動(群れの社会構成)、生態及び資源生物学の解明である。この調査プロジェクトはガラパゴス諸島のマッコウクジラは1985年から、ノバスコシアのマッコウクジラは1986年及びキタトックリクジラは1988から始まり現在も進行中である。