日本財団 図書館


4-2. サクション・カップ(吸盤)方式の設計と試作

 

サクションカップにより海中データ収集のための機器を鯨体に装着する方法としては、機器の直接打ち込み式や機器装置用の台座の打ち込み式ならびに吸着式などの方法が考えられるが、装着による生物への外傷やストレスを最小限におさえる方法としては機器の台座として、吸着式であるサクションカップを使用する方法が最良の方法としてあげられる。しかしその反面、サクションカップは長期装着には耐えられず脱落しやすいという欠点を有している。どんなに優秀なデータ収集機器があっても、脱落を防ぎ長時間編体の表面に留まらなければ必要なデータを手に入れることはできない。そこでサクションカップの欠点を補う脱落防止策を加えた改良案を検討し、設計と試作品を作成し吸着実験を行ったのでここに報告をする。

4-2-1. 設計の方針

サクションカップはくぼみの内部を陰圧にすることにより他物に吸着する仕組みになっている。長時間装着を可能にするためには、吸着力を高めることと吸着保持時間を延長することが必要条件となる。そこで海洋生物の中で強力な吸着力のある吸盤を有する、吸い着き型のコバンザメのコバン(多層板状吸盤、図4-2-1)・しがみつき型のイカの吸盤(陰圧有爪吸盤、図4-2-2)・からみつき型のタコの吸盤(陰圧吸盤、図4-2-3)等を参考にして設計方針を検討した結果、

1] 吸着力の強化

2] 吸着時の固定機能の付加

の2つを設計方針とし試作を試みた。

4-2-2. 設計案

(1) 吸着力の強化

1) 多層吸盤方式(コバンザメ方式)

より強い吸着力を得るための方法としては、サクションカップ内部を隔壁により複数に分割し、分割部分のそれぞれに吸着力を備えさせる方式を採用した。なおサクションカップ内部の構造の違いにより次の3つのタイプを採用した。

1] 円型タイプ

サクションカップ内部が同心円構造。(図4-2-4)

2] 板状タイプ

サクションカップ内部が並列隔壁構造。(図4-2-5)

3] 埋め込みタイプ

二重吸盤構造。本体サクションカップの形状の違いで2つの案を採用した。(図4-2-64-2-7)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION