日本財団 図書館


2) 浮上検知器

鯨類のバイオテレメトリーにおいては、陸上動物の場合と異なり、海面に浮上している時しか衛星に向けて送信することができない。他方、衛星の一回のコンタクト可能時間は約10分程度しか取れないほか、ARGOSシステムでは信号の処理機能の都合から1秒弱のパルスの送信を50秒間隔程度と制限されている。しかも、この1回10分程度のコンタクト時間内に3回ぐらいの受信を成功させねばならない。

したがって、装着個体が浮上する度に直ちに送信回路を起動させる浮上検知機能が不可欠となってくる。現在この種の浮上検知器は国産品になく、外国製品となる。それらはいずれも海水・空気の電気伝導度の変化を利用する方式(Saltwater Switch)となっている。

そこで本プロジェクトでは、外国製の海水・空気の電気伝導度の変化を利用する方式ではなく、超音波の海中と空中の伝達度の差による方式で、作動が極めて確実かつ送信体表面の汚れによる機能低下のおそれのない浮上検知器を、全く新たに国内で製作することとした。これもまた、一つの画期的技術開発といえる。

3) 曳航体の形状

曳航体(曳航式データ収集・送信体)の完成形状は、すなわち加工された浮力材の形状にかかわるので、以下の点に留意された形状となっている。

─鯨体が海面に近づいた場合、速やかにアンテナが浮上するように充分な予備浮力を持たせること。

─送信信号が衛星に捕捉される機会を最大にするため、海面に対してアンテナをなるべく直立させること。

─鯨体が海面を浮上した状態で移動する場合(2〜3ノットを想定)も、出来るだけアンテナが直立姿勢を保つこと。

─鯨体が海中を移動する速度(10ノットを想定)に対しても、曳航体の姿勢が安定していること。

─想定される様々な海中での状態に対して、曳航体が充分な強度を持つこと。

─新たに製作する超音波浮上検知機構が、曳航体自身の発生させる波をかぶらないで正常に機能するようにすること。

4) センサ(塩分、水温、圧力)

水深(圧力)センサ、水温センサについては、径30mmの小型耐圧容器の前部に収まるよう極力小型化した。

ただし、塩分センサについては、海洋データの収集上極めて重要な項目であることから、本格的検討をおこなうこととしたが、長期間洋上でメンテナンスフリーで、しかも径30mmレベルの曳航体に内挿、装着可能な程度に小型化したものの開発は、本事業の中では非常に困難であることが明かであるため、問題点の検討と関係資料の整理および試作を行うにとどまっている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION