3. 既往の装着方式に関する検討
3-1. 各種装着方式の種類と特徴
鯨類へのテレメトリー装置(タグ)の装着は、浮上遊泳中の個体へ接近したり、鯨類を一定時間静止(実海域での一時的捕獲)させることが困難(麻酔利用不可)等の問題があり、表3-1、3-2に示すような各種の方法が検討もしくは試験されているが、決定的な方式は末だ確立されていない。
比較的有効で実績の認められているものとしては、オットセイ、アザラシ類について体表面接着方式およびハーネス装着方式がある。またイルカ類についてはボルト締め方式による背ビレへの装置の固定がある。
しかしながら、鯨類への装着方式として各方式を検討すると、「体内埋め込み方式」はタグ本体中のセンサから体内情報(体温、心拍数等)も得られる点で魅力的であるが、電源およびアンテナの問題で大きな課題が生じ、課題が多い。
「体表面接着方式」は、鯨類には麻酔の使用が出来ないため個体を一定時間静止させることが困難であること、生体の新陳代謝により長期間の保持が困難である点において、やはり課題が多い。
「ハーネス装着/曳航方式」、「バンド曳航方式」、「ボルト締め方式」はいずれも、鯨体の大きさにおいて非現実的であり、さらに個体を一定時間静止させることが困難であることから、不適であることは明白である。
すなわち可能性の認められる方式としては、前述したように、「サクション・カップ方式」および「ピン打ち込み曳航方式」の2つが指摘される。実際、良好な成果を上げている実験例は、ピン打ち込み曳航方式を用いている米国オレゴン州立大学のDr.B.R.Mateのグループとサクションカップ方式を用いているカナダのダルハージー大学のDr.S.Hookerのグループである。