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2-2-3. システム稼動上の技術的要請

上記のようなくじら類の生態挙動からくる技術上の要請に加えて、システムの稼動、運用上で要請される事項にも留意する必要があるので、その点についても触れておきたい。

(1) エネルギー補充貯蔵技術

曳航体内に内挿、収容する各センサ・装置を長期にわたり安定的に作動させるために、各装置に供給する電源のエネルギーを補充または貯蔵することは大変重要な要素である。

1次または2次電池による蓄電は、電池容量と電池寸法が重要である。近年、小型大容量の電池が出回っており、1次電池ではカメラ等に多用されているリチウム電池(黒鉛リチウム、マンガンリチウム等)が性能、価格、入手性の点で有効であると思われる。2次電池の場合は、ビデオカメラ等に多用されているリチウムイオン電池が性能的に最も優れているが、少量生産の製品には対応していないため、価格、入手性の点で問題がある。

鯨類のように半地球規模の回遊を行う生態行動を解明しようとする場合は、装着する曳航体が数ヶ月から1年以上機能することが求められているが、この要求に対して、電池にかわるシステム開発が考えられている。それは、曳航体に発電機能を持たせて、曳航体自身で発電させて所要電力を得ようという画期的システムである。

考えられる発電機構のひとつとして、曳航される曳航体の流体(海水)に対する運動を動力源として発電させる方法がある。利用できる運動形態として、回転運動と振動が考えられる。現在腕時計に広く採用されている微少な運動を電力に変換させる方式や、出力数Wを目標としてプロペラで曳航体を回転させ発電する方式の開発が検討されている。これらは、将来的課題といえよう。

(2) データ送信技術

鯨類のバイオテレメトリー情報として必要な要素である位置、深度、水温、塩分等の計測機能を搭載した曳航体のハードウェアの構成について考えた場合、各計測項目を計測するための「計測部」、データを送信するための「送信部」、計測したデータの記録および各部シーケンスを制御するための「CPU部」、電源を発電または蓄電するための「電源部」、さらに貴重な電源を浮上時のみ送信させるための「浮上検知部」に大別できる。

これらの装置においては曳航体のサイズ、重量の制約から、できるだけ小型、省電力であること、および計測期間が長期にわたることから安定的に性能を発揮することが望まれる。そのため、できるだけ既存の技術(製品)を流用または応用するのが望ましい。

「計測部」は、小型のCTDやXCTD等既存の製品の技術を流用し、より小型軽量、省電力の装置を製作する。現実的には水温センサの突起を含まない寸法で40×50×40mm以内、重量500g以内、動作時消費電流5.0V/0.15A以内のものが予想される。

「送信部」は、既存ARGOSプラットフォーム用の小型送信機の技術を流用し、より小型軽量、省電力の装置を製作する。現実的にはアンテナの突起部を含まない寸法で30×25×20mm以内、重量30g以内、動作時消費電流3.6V/0.15A以内のものが予想される。

「CPU部」は、ワンチップCPU、データ記録用のメモリ、多チャンネルA/Dコンバータ、PIO等から構成される市販のデータロガー用基板の流用や各装置で使用している制御部分の機能を拡張し使用する等が予想される。

 

 

 

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