したがって、センサの最大計測水深は、対象鯨種によって使い分けるのが良いと思われる。つまり、0〜500m用と0〜2,000m用の2区分とする。国内外で市販されている圧力センサの多くは最大圧力10Mpa(約10,000m)程度まで標準的にカバーしており圧力センサの入手も容易であると思われる。
また、計測精度については、標準的な圧力センサの精度は±0.25%F.S.〜±1.0%F.S.程度のものが多いことを考えると、0〜500mレンジ用で±1m、0〜2,000mレンジ用で±5m程度が妥当と思われる。ただし、価格や入手性に目をつぶれば精度が±0.05%F.S.のものもあるので、最終的には0〜2,000mレンジ用で±1m程度まで精度を上げることは可能であるがデータの精度(分解能)はデータロガー(メモリ)の容量に影響することも考慮しなければならない。
計測間隔は潜行行動の細部まで把握する場合には1分間隔が適当と思われるが、単位期間内に何回どの程度の深さまで潜行するかといった概略的な行動特性を知る場合には、計測間隔は別の基準で考えることが妥当と思われる。
計測期間は6ヶ月〜2年程度必要と指摘されており、これも追跡調査の目的によって区分すべきであろう。
(3) 水温の計測と精度
鯨類に限らず海洋生物の行動はあらゆる種を通じ水温に支配されており、生態を知るうえでも、また、海洋情報収集のうえでも水温の情報は必要不可欠の要素である。
一般に水温を計測する場合、センサとしてはサーミスタを金属製のケースに封入した水温センサを用いており、BTセンサやCTDセンサなど市販されている海洋測定器の多くがこのセンサを使用している。また、白金側温抵抗体単体はJIS C1604-1989によりその特性が規定されているが、実際の使用にあたっては封入する金属製ケースの材質、形状および取り付け位置が水温変化に対するレスポンスを決定する要因となる。
水温の計測範囲については市販されている海洋計測器の多くが-5℃〜+40℃程度の計測範囲であることを考慮し、同程度の計測範囲とすることが妥当と思われる。また、計測精度については、バイオテレメトリーシステム以外の海洋計測器(CTDやXBT等)で取得したデータとの互換性を考え、±0.05℃以内が妥当と思われる。ただし、データの精度(分解能)はデータロガー(メモリ)の容量に影響することも考慮しなければならない。計測間隔は1分間隔、1回/日、浮上時の海面水温のみ等の指摘がある。
計測期間は数ヶ月〜2年が要望されている。これは調査の目的によって区分すべきで統一的に設定する必要はないと思われる。
(4) 塩分の計測
塩分の情報は、鯨類の行動生態に直接関係するものとしてではないが、海洋構造を知る目的すなわち海洋情報収集のうえでは、前述した位置、深度、水温の情報と同様に必須の計測項目となっている。