海水の塩分は海水のイオン濃度(主に塩素イオン、ナトリウムイオン等)を表す電気伝導度(海水がもつ電気抵抗率:単位mS/cm)により決定される。ただし電気伝導度は水温、深度の影響を受けるため、この3要素を塩分の定義式に代入することにより算出される。
一般に電気伝導度を測定する場合、センサの方式としては電磁誘導方式または電極方式を用いる。前者は互いに向き合ったドーナツ状の磁性体コアを伝達する電気信号が間を通る海水の電気伝導度に比例して変化する原理に基づいており、経年変化が小さく、汚れに強い反面、電磁誘導現象を利用しているため、外囲条件に影響を受けやすいという欠点がある。
また、後者は直接海水に浸かった白金製の電極間を伝達する電気信号が海水の電気伝導度に比例して変化する原理に基づいており、外囲条件に影響を受けにくく、比較的小型化できる反面、汚れの影響を受けやすく、分極現象による誤差があるという欠点がある。
したがって、長期的に無保守で使用するバイオテレメトリーシステムでは電磁誘導方式が妥当と思われる。
電気伝導度の計測範囲については市販されている海洋計測器の多くが、0〜70mS/cm程度の計測範囲であることを考慮し、同程度の計測範囲とすることが妥当と思われる。
また、計測精度については、バイオテレメトリーシステム以外の海洋計測器(CTDやXBT等)で取得したデータとの互換性を考え、±0.03mS/cm程度が妥当と思われる。ただし、データの精度(分解能)はデータロガー(メモリ)の容量に影響することも考慮しなければならない。計測間隔および計測期間は水温と同様の要望をされているが、これも調査の目的によって区別すべきで統一的に設定する必要はないと思われる。
(5) その他の項目の計測
以上のように、鯨類のバイオテレメトリー情報としては、位置、深度、水温の情報は必要不可欠な要素であり、塩分がそれに準じている。その他の計測項目として挙がっているものとしては次のものがある。すなわち、地磁気、方位、クジラの体温、クジラの心拍数、画像等の情報がそれである。
これらは、曳航体のサイズ、供給/消費電力、データロガー(メモリ)の容量等の問題を充分に考慮したうえ可能であれば計測対象として検討することが望ましいと指摘されている。
過去に行ったアンケート調査に基づいて、クジラ類のバイオテレメトリー情報として要視される項目とその計測精度、期間、間隔等について整理したものを、表2-1に示した。
2-1-2. 海洋情報収集上の積極的意義
海洋情報の収集は、今日、極めて広範に取り組まれている。定点ブイによる点情報(ただし、海中の鉛直方向の立体情報も収集できる)、船舶による線情報(一般に、側線をあらかじめ設定して一定のインターバルで定期的にデータ収集する。立体情報も適宜、収集している。)が海洋での情報収集の主力である。