社団法人日本海難防止協会の平成十一年度通常総会にあたり、ご挨拶申し上げます。
わが国は、四方を海に囲まれ、海から大変な恩恵を受けています。それだけに海を利用するに当たって、船舶の航行の安全を確保し、また海洋の汚染を防止することが非常に重要な意義をもつものであることは、申し上げるまでもございません。
皆さまご承知のとおり、貴協会はそのようなニーズに応え、昭和三十三年の設立以来、船舶の航行安全や海洋汚染防止に関する民間における中心的な機関として大きな成果を上げてこられ、昨年設立四十周年を迎えられたところであります。
最近にも、ナホトカ号事故やダイヤモンドグレース号事故などタンカー事故が相次ぎ、改めて海洋汚染の防止や航行安全の確保に対する取り組みの重要性が確認されたところであります。
特に、ナホトカ号事故でも明らかになったように、油事故が発生した場合に日本海の環境を守るため、環日本海地域諸国の協力体制を強化することが必要であり、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)に基づく活動がますます重要になってきております。
このような背景の下、昨年九月には富山において、貴協会は、運輸省と共同で「海洋汚染に係る準備及び対応に関する地域間協力のための非公開専門家会合」を開催されました。
また、先般、中国で開催されたNOWPAP第四回政府間会合において、わが国はNOWPAP本部誘致を表明したところであり、今後わが国周辺諸国の協力体制の強化にさらに積極的役割を果たすこととしております。
したがって、このような海洋汚染防止の国際的協力体制の構築に向けて、貴協会の果たす役割は大きく、貴協会の活動は今後ますます重要になってくると思われます。
この他、貴協会は、近年各国で問題化している船舶のバラスト水問題に関する調査研究や運輸省をはじめとする各機関からの受託研究など、各種の調査研究にも積極的に取り組んでおられ、その成果は貴重な資料として各方面で活用されています。
この機会に、このような重要な活動を支えてこられた会員の皆さまに対し、運輸省として深く感謝申し上げるとともに、この活動を種々の面で援助していただいている日本財団、日本海事財団、笹川平和財団の貢献に対しても深く敬意を表するものです。
長い間会長を務められた寺井会長には、大変お疲れさまでした。運輸省としましても寺井会長のご功績に対して敬意を表し、お礼申し上げます。
今後も貴協会が海洋国家日本を支えるシンクタンクとして、船舶の安全確保、海洋汚染の防止等に積極的に取り組まれるとともに、近隣諸国との海洋汚染防止に関する協力体制の構築等にも鋭意取り組んでいかれることを期待いたしまして挨拶とさせていただきます。