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図5は携帯型海上ネットワーク端末の試作機の写真とそれを利用して実施された海上実験時の画像例を示すものである。

本システムは現代の通信・航法・監視技術と整備された海上通信産業基盤を応用することで初めて実現したものである。衛星/携帯電話の通信、GPS/DGPSと公式電子海図の航法、携帯電話ネットワークを介した監視で構成されている。ほぼ一分ごとの複数船舶の軌跡を含む位置を海図上にプロットした画像が、陸上/海上の区別なくホームページとして提供されている。

ここに紹介した海上ネットワークシステムの試みは、今まで実現し得なかった環境のシステム化、船舶と陸上の協調操船等の実現を飛躍的に前進させるものとなると考える。本システムの開発者等が想定している適用分野を以下に紹介する。

 

図5 携帯型海上ネットワーク端末と画像例(?日野マリンパワーシステム研究所)

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◆局所的な交通情報提供サービス(Local Vessel Traffic Infor-mation Service System)

日本の公的VTSが実現し得ない港および沿岸近傍を航行する小型船をも対象とした陸上支援シス

テム(Local VTIS)への適用が計画されている。本システムは経費と技術の両面において、導入が極めて容易であることが、現存する公的VTSと大きく異なり、漁船、プレジャーボート、内航船等への広い利用・活用が予想される。

◆情報化水先案内サービス(Shore-based Information-ori-ented Pilotage System)

本システムの水先案内業務への適用が検討されている。このシステムは陸上側からの監視に伴い、対象船舶の運動(針路、速力、位置)履歴を蓄積しており、蓄積した過去の操船結果の再利用が可能なのである。

さらにシステム化を進めれば、蓄積された履歴データに基づいた入港・着桟操船計画の支援と陸上計測による最新の環境情報を提供することが可能となり、現在の水先案内業務と同様の操船上有用なサービスを実現できるのである。

水先人、熟練船長の個人的経験としてのみ蓄積され、再利用できなかった入出港操船履歴を、陸上側が蓄積することで多くの入出港船舶への提供と有効な活用を実現し、安全性の向上に寄与することを目指すものである。水先案内が強制されない小型船、初めて海域を航行する操船者などに極めて有効なサービスとなることが予測される。

◆ネットワーク/インターネット・レーダ・システム

本システムは衛星/携帯電話ネットワークを船舶陸上間の通信手段として用いている。このネットワークは船舶陸上間のみならず、船舶間でも利用可能であり、レーダーのARPAデータを相互通信すれば、他船舶のレーダー・イメージを得ることが可能となる。このコンセプトに基づくシミュレーションが実施されている。

 

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操船シミュレータの例((株)エム・オー・マリンコンサルティング)

 

 

 

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