現在、習熟度の検討、操船技能の評価方法の検討、訓練シナリオの改良等が国内のシミュレータを保有する機関で実施されている。
図4は、乗船実務経験の異なる三人の船長免状取得者により実施された同じシナリオ9(パイロットステーションヘのアプローチ)の操船シミュレーション軌跡を示すもので、操船技能の評価法の検証を目的として行ったものである。
ぺーパー船長と実務歴八年の船長とには、免状は同じでも、実務的操船能力に大きな差があることが、図からも明らかである。この実務的操船能力の差を定量的に評価することが、総合的のみならず要素技術ごとにも可能となったと報告されている。多少の改良等は必要であるが、合理的に構築された効果的な訓練プログラムであるとの評価を多くの操船実務者から得ている。
訓練プログラムとして考案した操船者育成のシステム化は、日本の海技士資格および船員教育カリキュラム等に影響すると考えられる。標準的操船の設定と操船タスク・要素技術・技能の概念が、多種多様で対応しきれなかった操船における安全概念を統一し、これからの安全な操船の実現を担う操船者の育成には体系的な教育・訓練が不可欠であるとの共通認識が得られたと考える。
(2) 海上ネットワーク技術の適用
前述のとおり、船舶が航行する海域等の環境(自然および交通)のシステム化が海上交通の安全性と効率の向上に最も有効であり、最優先で取り組むべき課題にもかかわらず、技術と経費の壁に阻まれて、先送りされてきたのが実状である。
しかし、近年の通信産業基盤の整備等が簡便な海上ネットワーク技術の展開を可能せしめ、環境のシステム化等に道を開き、海上ネットワーク技術を利用したシステム化が試みられている。