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平成二年ごろ廃棄物の越境移動に関するバーゼル条約が採択されましたが、環境のエキスパートを中心として条約案文が策定され、伝統的無害通航権が覆されそうになったことがあり、わが国がその問題に気づき、わが国の指摘により先進海運各国も通航のエキスパートが参画し案文を訂正したことがありました。

IMOでも「特別に敏感な海域の設定」という議題を巡り同様なケースにお目にかかりました。海洋環境保護は全世界的な重要なテーマであることに疑う余地はありませんが、他方で通航の確保も世界の通商を支える重要な問題であり、どのようにバランスされるかが求められているものと思います。

 

今後の海事政策

 

今後世界の海事政策は、基本的にはIMOを中心として従来の枠組みをいかに機能させ、機能しているものは改善し、また装備・装置といったハード分野のみならずヒューマンエラー削減という極めて人間的な部分への取り組みをしつつ、他方、従来濃度差のあった「国家実行」により高いレベルでの実行がもとめられる傾向があり、同時に、従来どおりの西欧先進海運国を中心とした自国海事政策に基づくIMOへの働きかけと便宜置籍国を中心とした反発の構図も維持されるものと考えられ、今後の具体的な意思決定は流動的であるといわざるを得ません。

 

おわりに

 

ロンドン連絡事務所では、歴代洋上勤務経験を有するだけでなく、海上交通行政、海洋環境保護行政、海上警察行政等の幅広い経験を有した者を派遣しています。

流動的意思決定の行われることが予想され、かつ意思決定がわが国の海事行政に大きく影響を及ぼす状況下にあっては、かかる経験をべースとしたIMO等の会議への参画、関係機関からの情報の収集、海事政策などの調査研究がますます重要になってきていると痛感しており、これら成果がわが国の海事行政に貢献できるものと信じて疑いません。

 

DGPSが全国運用へ

 

海上保安庁は、平成十一年四月一日からディファレンシャルGPSの全国運用に入った。

DGPSは、平成九年三月下旬から神奈川県剣埼、三重県大王埼の両局で運用を開始した。その後平成十年四月から一一局を整備し、北海道周辺、日本海東部、南西諸島を除く海域で運用されていた。

そして、平成十一年四月からさらに一四局増やして合計二七局で運用することとなり、これにより小笠原諸島など一部の遠方離島海域を除く日本沿岸がすべてカバーされることとなった。

利用範囲は送信局から約二百キロメートル以内。誤差は十メートル以内とされているが、実際は二〜三メートルと精度が高く、DGPS受信機を電子海図システムと接続すれば海図上に自船の正確な位置を表示できるメリットがあり、すでに運用されている海域では利用者が増えている。

 

わが国のDGPS局配置および有効エリア

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