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7.2 今後の課題

 

本開発事業における今後の課題としては、次の項目が挙げられる。

(1) 本事業で開発された地上基地周装置〜センタ処理装置間の情報伝送手段には有線を使用している。本システムを導入するに際して、新たにケーブルを布設する場合には多大なる経費を必要とする。業務用無線機などを使用してセンタと停留所間を無線で結ぶ手段や、直接センタと車上を結ぶ手段など、トータルな見地からの情報伝送手段の検討が必要である。

(2) 出発抑止機能は、ダンゴ運転の防止や等時隔運転の実現などに有効な手段である。本システムではセンタ処理装置の手動入力で実現されていが、ダンゴ運転の発生が予測されるような場合に、出発抑止操作のマニュアル介入要請を行うなどの判断機能を追加したならば、より有効となりうる。そのための論理の検討が必要である。

(3) 併用軌道におけるLRVの運転は目視運転が基本である。従って、在来の鉄道信号システムのように機器自体にフェールセーフ性を持たせていないが、高速進行信号は、車上で要求してセンタで判断した結果が車上に戻ってきた際、すなわちシステムが全て健全な時のみ有効とし、また、GPS受信不良時には、停留所聞在線情報を安全側情報である車両在線状態に固定するなど、システム的に安全性確保に配慮した構成としている。しかし、LRT高速運転用信号システムの実用に際しては、改めて、安全性の整理が必要である。

(4) 海外におけるLRVは、80km/h程度の高速走行性能を有しているが、シミュレーションでは60km/hまでの速度と、それに対応した加減速度により評価した。しかしながら、LRT高速運転用信号システムの実用に際しては、最高速度をどの程度にするか、さらに高速運転のための問題点の抽出やその対策の具体化などの十分な検討が必要である。

(5) LRT高速運転用信号システムの実用上の諸問題を確認するため、シミュレーションにより評価を行ったが、今回のシミュレーションモデルは、系統制御方式の交通信号機を対象としたものの直線のみで、実線区を対象としたものではない。従って、本シミュレーションの検証にはモデル化が可能な実線区において、実交通流との整合性を検討する必要がある。

 

 

 

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