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センタ処理装置は、各車両の位置を把握し、停留所間に先行車両不在時に高速進行信号を車両に出力する。また、出発抑止信号を出力する。

停留所における車載装置と地上基地局装置間の情報伝送手段には、通信到達距離を抑え、指向性を有する特定小電力無線機を使用し、また、センタ処理装置と地上基地周装置間は有線で行う。

このシステムを総合試験により機能確認を行った。試験では、上記荒川線の現車試験で取得した走行データを使用し、室内模擬走行試験の形態で実施した。

試験では

1] A線1車両による停留所間走行

2] A線2車両による停留所間走行

3] A・B線各1車両による3停留所間走行

4] 停留所周辺GPS受信不良時の走行

の試験項目により、「高速信号許可論理と走行終了判定」、「出発抑止」、「GPS受信不良時の異常処理」などの機能が実現されていることを確認した。

この結果、試作システムが所期の機能を発揮し、LRVの高速走行に有効であることが確認できた。さらに、試作システムは、線区の車両走行状況の把握や、出発抑止による等時隔制御など、運行管理の面からも有効であることが確認された。

 

7.1.3 シミュレーションによる評価

LRT高速運転用信号システムの実用上の諸問題を実システムで確認することは困難なため、車両の走行シミュレータを開発し、シミュレーションにより評価を行った。

モデル線区は直線で、交通信号機の系統制御や同方向及び対面方向の自動車交通流は模擬できるものの、右折車や交差方向の交通流は考慮せず、単純な構成としている。

シミュレーションの評価因子としては、運行管理面、道路交通流からの面、旅客流動の影響による利用者の視点からの3点から多角的に評価した。

第1の運行管理面からは、LRVを高速化する場合、高加減速化も合わせて行うことが望ましく、本モデルにおいて、速達性の向上が達成でき、LRT高速運転用信号システムの有効性を明示した。

第2の道路交通流の面からは、自動車交通を優先する交通信号機の系統制御式において、スルーバンド(青信号で通れる時間帯)内をLRVがスムーズに走行する「スルーバンドマッチング法」を提案し、本モデルにおいて、提案方式の有効性が確認され、渋滞を与えない交通流の一構成法を明示した。

第3の旅客流動の影響による利用者の視点からは、路面電車に遅れを与えてシミュレーションした結果、高性能化したLRVは与えられた遅れの回復が可能となり、提案する出発抑止機能を活用した等時隔制御によりダンゴ運転が解消される可能性が示され、LRT高速運転用信号システムの有効性を明示した。

以上のことより、単純なモデル化によるシミュレーションでは、LRT高速運転用信号システムが有効になりうることが示された。しかしながら、旅客流動の影響と道路交通流の両面のシミュレーション結果からは、乗車係数(乗客一人当たりの乗車に要する時分)が低い場合は、LRVの高性能化の効果があり、ダンゴ運転の解消に役立つが、乗車係数が上昇すると、高性能化したLRVといえども、スルーバンドを外れ、ダンゴ運転にいたる場合が発生した。従って、運賃収受方式の見直し等、停車時分を短縮化する方策が肝要であることを明らかにした。

 

 

 

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