日本財団 図書館


7. 研究の成果と今後の課題

 

「LRT高速運転用信号システムの開発」において、調査・研究すべき主な項目により試作装置を設計・製作し、各種の試験を行い、貴重なデータを得ることができた。また、シミュレーションにより本システムを多角的に評価した。

これらの調査・研究において得られた研究の成果と今後の課題を以下に述べる。

 

7.1 研究の成果

 

本開発事業により得られた研究の成果として、次の項目が挙げられる。

 

7.1.1 GPSによる車両位置検知

本システムの重要な構成要素である、汎用GPSを活用した車両位置検知機能の確認のため、都電荒川線の実車両にGPS受信機を取り付け現車試験により、GPS受信感度、位置検知性能などについて確認を行った。

JR線の高架下など上空が開けていない特殊な場所を除き、荒川線全線の約98%の区間(約12km)でGPS受信可能であった。それらの位置検知精度は、荒川線の車両長(14m)を基準に整理すると、ディファレンシャル有効時は、ほぼ基準内におさまっているが、ディファレンシャル無効時には、誤差が拡大し、問題となる。

これらの測定結果より評価すると、GPS車両位置検知情報は、高速走行可能か否かの判断に使用する停留所間の車両在線検知や、高速走行区間における走行終了制御のための車両位置検知では有効である。一方、停留所での停車判定では、停留所停車時運転手が操作するドア開閉スイッチなどと連動をとることで、検知精度の低下を補うことが出来る。また、GPS受信不良の際には、発生位置が特定されることから、特殊処理を追加することで対処可能である。

以上の結果、本システムの車両位置検知には、汎用GPSを活用した車両位置情報を使用することが十分可能であることが確認された。しかしながら、この汎用GPSを軌道回路やトロリーコンタクタに代る手段として使用することは、時期早尚のように思われる。

 

7.1.2 LRT高速運転用信号システムの開発

LRVの走行する併用軌道では、軌道上など地上に機器を設けることは、極力避けなければならない。そのためカーナビゲーション等で使用されている安価な汎用GPSを活用して車両位置を検知し、その情報を使用してセンタで高速運転可能かの判断や、等時隔運転の実現およびダンゴ運転防止のための出発抑止などの機能の実現を特徴とする「LRT高速運転用信号システム」を開発した。

システムは、車載装置、地上基地周装置、センタ処理装置より構成される。

車載装置は、車両に搭載され、GPS車両位置検知、地上〜車上間の情報の授受、高速進行信号表示など運転手への各種表示を行う。

地上基地周装置は、車載装置およびセンタ処理装置との情報の授受を行う。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION