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5.6 LRT高速運転用信号システムのシミュレーションによる評価のまとめ

 

LRTの高速運転用信号システムのシミュレーションを実施し、本システムを多角的に評価した。その成果をまとめると、次に示すようになる。

(1) LRVを高速化する場合、目視運転が基本となるので、LRVの減速度を向上し、現行の路面電車のブレーキ距離と少なくとも同一のブレーキ距離で停車できるようにする必要がある。そこで、LRVの高速化に際しては、高加減速化も合わせて、高性能化することが望ましく、高性能化したLRVは、速達性の向上に資することを明示した。

(2) 高性能化したLRVは、運行管理面からも在来路面電車より優れ、それに適した効率的な車両運用の構成例を示し、LRT高速運転用信号システムの有効性を明示した。

(3) 自動車を優先系統制御する方式において、スルーバンド(青信号で通れる時間帯)を広く取り、その中をLRTが走行できるよう構成する「スルーバンドマッチング法」を提案し、シミュレーションを実施した結果、提案方式の有効性が確認された。

(4) 前項のスルーバンドマッチング法による道路交通流の面からも、在来路面電車より高速、高加減速化したLRVの方が有利で、LRT高速運転用信号システムの有効性を確認した。

(5) 乗降パターンをモデル化し、東京都交通局荒川線の調査データを基に、乗降人員と停車時秒の関係を定数化して、列車遅れを発生させ、旅客流動の影響によるシミュレーションを実施した結果、本LRT高速運転用信号システムの有効性が確認された。

(6) 前項のシミュレーションの検討結果から、いずれも在来車では遅れが発散し、混雑率も損失時分も増大することが認められたが、LRVは、与えられた遅れが回復し、混雑率も増大することが防止され、利用者の視点からも満足できることが確認された。

(7) 高速、高加減速化されたLRVは、回復力が高いので、先行列車に接近するチャンスが多く発生する。そのため、提案の出発抑止機能を活用した等時隔制御方式が有効で、ダンゴ運転の解消に役立つことが確認された。

(8) 道路交通流をシミュレーションする場合、乗用車換算で数台の自動車一つの群としてまとめ、これをパケットとして走行させる「自動車群の走行シミュレータ」を開発し、シミュレーションした結果、自動車交通を犠牲にしない交通信号機の制御方式を例示し、その有効性を明示した。また、オフセットを基本オフセットとし、自動車群を系統制御する場合において、対向の自動車群の系統速度を算出する一般的な計算式を案出し、リンク長とサイクル長から系統速度を容易に計算できる手法を確立した。

(9) 道路交通流と旅客流動の両面の影響下におけるシミュレーションにおいて、乗車係数 (乗客一人当たりの乗車に要する時分)が低い場合は、LRVの高性能化の効果があり、ダンゴ運転の解消に貢献するが、乗車係数が上昇すると、LRVといえども乗車時秒の増大を招き、停車時秒が延び、スルーバンドを外れ、信号待ちとなり、ダンゴ運転に至る場合が発生した。従って、運賃収受方式の見直し、短縮化など、停車時秒を短縮化することが肝要であることが明らかにされた。

 

 

 

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