これは、構想としてもすばらしいと思うし、やってる人たちの挑戦精神もなかなかすばらしいと思うんですね。ただ、住民がどこまで理解してくれるのかなという、ちょっと不安もあるんですけれども。まあ、見てきた人間にとっては、これはぜひ成功させたいなと。2000年の7月に第1回の大地の芸術祭というのをやるわけです。そのときには、許されることなら見に行きたいなと思うぐらいの、なかなか魅力のあるプロジェクトですね。
こういうことを考え出した人というのは、相当すごい人だと思うんですよ。私は、ある程度、この人が言い出しっぺじゃないかなと思う人はいるんですけど、確かめなかったですけれどもね。ただ、そういう人がいる、いないということは、特にこういう広域連携なんかの難しいプロジェクトをやる場合に、成否を分けるような分かれ目になるんじゃないかなという、改めて人の大切さというのを感じましたね。
それから同じく、新潟の小出地域広域圏の場合は、これは文化会館が主なテーマなんですけれども、行政が、滑り出しでちょっと不手際があって住民参加の進め方をちょっと誤ったようなところがありまして、さっき言いましたような絶縁状問題にまで発展しちゃって、あわやということになったんです。かえってそういう確執を越えて、うまく住民と行政とが協議をする方向に持っていけたというところなんですが。
そのときに、文化会館の館長さんをだれにするかという問題が起きて、これがまた大分もめたらしいんですよ。住民のほうは、行政のOBとかそういうことじゃ絶対だめだということですったもんだした挙げ句、結論的に言うと、民間の工務店の大工さん、当時39歳の人が館長さんになって、これがなかなかすばらしい人らしいんですね。人間的にも、それから能力的にもすばらしい人で、これですっとうまくおさまって。この人が評判がよくて、地域外からも講演依頼が殺到するなんていうこともあって、この人がいたから、この文化会館事業はうまくまとまったんだなと。それだけじゃありませんけど、そういう感じをしましたね。
柴田委員長 その人は商売をやめてるんですか?
太田委員 いや、やめてないんじゃないですか。館長は非常勤だと言ってましたから。
柴田委員長 村井先生も、何か矢吹さんかだれかとお目にかかったという。
村井委員 わずかの経験ですけど、本当に熱心にやっている人。それから、そういうのをやらせる上司、理解派上司、これが必要条件みたいな感じがしたんですが。特に、この矢吹さんなんかがやっている運動―ダムの周辺をキャンパスに見立てて現代美術を展示する―という場合に、やっぱりダムでしたから、反対期成同盟というのができて反対した。それがある時期から反対をやめ、対策同盟になった。その団体が、お互いの話し合いのルールをよく知っているので、いろいろな問題もすぐのみ込めてもらえたというふうなことを言ってましたね。
それからもう一つは、環境芸術というか、現代美術をやっている熱心な人がいて、これが現地でいろいろなこと、子供たちに美術指導をするというふうなこともやっている。この3者で進めている。これは特異な事例かもしれませんけれど、熱心な行政の人、対策同盟の中心になった人、それから現代芸術、環境芸術の推進者、それらがうまくまとまっているという点では、新しい形の有り様を示しているんじゃないかなというふうなことを感じました。