(4) テーマの一貫性
当デザインセンターの事業は、すでに指摘したように、「冬の阿蘇を創る」、「草原・景観を保全する」、音楽や食などを通して「新しい文化を創造する」といったテーマで一貫性をもっている。委託事業も助成事業も名称は各々異なるが、テーマに引きつけた内容をもって実施されている。この一貫性あるいはいい意味での頑固さは、当センターの事業の大きな特徴のひとつと言って良かろう。とことんテーマに執着して推し進めている様は、総花的な事業展開より、周りから判り易く、事業展開の初期段階では効果的であるように思える。また、センターの存在を強くアピールすることにもなっている。
(5) 構成町村の取り組みの「温度差」
広域連携においてその広域を構成する(あるいはその広域エリアをなす)自治体の取り組みの姿勢や意識に「温度差」があることが、連携の効果的実施をむずかしくしているケースが見られる。当センターのばあいは、構成自治体が一律に、あるいは同じように事業にかかわることを求めることはしていないように思える。むしろ、各々の特色を生かした取り組みや、芽を出し始めた発展の可能性のあるものを積極的にサポートする姿勢をとっている。地域づくり・観光振興という目的を追求するからには、どの町村も一律ではありえないからであろう。各町村の個性を明確にしていくことと、それら町村を含む広域全体の地域振興・観光振興とはむしろ相互に高めあう関係であり得るのである。
(6) ハードとソフト
広域連携は、ハードの側面を強く持つものとソフトの側面を強く持つものとがある。当デザインセンターの事業はソフトにかかわるものが殆どである。事業を実施するばあい、各町村の既存の諸施設が利用されている。事業の成果は建物や施設などのハードにかかわるものではない。人々の交流・触れ合い、意識の変革、組織化、人材育成……。当センターの事業はソフトにかかわるものが殆どである、と記したが、事業の展開によってはハード面が重視されるものが将来必要となってくるかも知れない。しかし、初期の段階ではやはり、ソフトにかかわる蓄積が重視されて然るべきであろう。施設が残った、というだけでは地域振興も観光振興も覚束ないのである。現段階では、過疎対策で設置された施設を活用するという視点が、広域連携事業に当たって強調されてもいいのではないだろうか。