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その同じ12町村が当デザインセンターの出資団体なのである。つまり、阿蘇郡(地域)においては、住民の生活・福祉にかかわる事業は広域行政事務組合が、広域連携による地域づくりと観光振興はデザインセンターが、それぞれ機能を分担している。広域行政事務組合の処理業務の中に、「広域計画の策定」や「ふるさと市町村圏事業」も含まれているが、それにかかわる事業については、すでに見たように、デザインセンターに業務委託しているのである。このような両者の分担関係は、両者の事業を巡って重複や混乱を回避できるだけでなく、それぞれの機能を独自に展開させる可能性を生み出している、と言えよう。阿蘇郡という古くから一体性のある地域を活動領域としている有利な状況がそこにはあるのである。

 

(2) 事務局体制の確立とリーダーシップ

 

当デザインセンターの事業展開にあたって、平成8年に専任の事務局長として着任した若井康彦氏の存在は極めて大きい。事務局長の下、町村からの出向職員3名と数名の臨時職員が、事務局を構成している。町村長の理解を得て有能な出向者を得て事務局体制をひとまず確立していることは、センターの存続や事業展開にとって非常に重要なことである。

若井氏は、長年、シンクタンクの研究員として地域問題に取り組んで来た人物である。公募という形で、豊富な経験や知恵、そして人間関係(人脈)を備えた若井氏を事務局長として迎えたことは、すでに分析したような当センターの事業展開のあり方に対して決定的な影響を与えたと言っても過言ではない。彼のリーダーシップの下、地域づくり・観光振興にかかわる種々のアイデアやコンセプトが、地域内外の個人、グループ、行政機関、民間の組織や企業等を巻き込みながら、実現の方向で動いているのである。広域連携という、新しい事業展開の課題に取り組むとき、その広域を構成する自治体間の姿勢の差を調整する役柄も重要であるが、それにもましてリーダーシップを揮える人物の存在は欠かすことができないのである。

 

(3) 人材育成・人的交流の重要性

 

リーダーの存在と並んで、地域内での人材の育成も欠かせない。広域連携のばあい、事業展開を実際に担う人材が得られなければ、その実現は不可能である。人材を発掘し、事業を展開する中で、担い手を組織し、担い手の意識を事業を通して変革していくことが重要である。当デザインセンターの事業実施の過程でそのような方向が意識的に追求されているように思える。デザインセンターが専ら事業を請け負うのではなく、事業のテーマやコンセプトに賛同する個人やグループ等を積極的に組織し、交流させることが重視されているように見うけられる。そのことが地域づくり・観光振興に関心を持つ個人やグループが自ら事業を展開させる力をつけることになるだろう。そのような力を蓄積することが長期的視点から見て、地域社会の発展にとって不可欠である。

 

 

 

 

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