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第10節 財団法人阿蘇地域振興デザインセンター(熊本県)

 

熊本県東北部に位置する阿蘇郡は、阿蘇五山を中心とした世界最大級のカルデラとそれをとりまく外輪山と広大な草原地帯からなる地域である。その豊かな自然は古くから人々を引き付けてきたが、早くも昭和9年に阿蘇国立公園の指定を受けている。

阿蘇地域は、年間の観光客も入込数約1600万人にも達し、九州最大の観光地の地位を誇っている。しかし、この地域の主力産業である第1次産業の不振は、地域人口の減少ないし停滞、さらには高齢化を招き、阿蘇郡12町村のうちの9町村が過疎地域町村の指定を受けている。

バブル経済のリゾート・ブーム時に、環境・自然を尊重し、乱開発に対処するために、県主導で財団法人阿蘇環境デザインセンターが設立された。これが、後に改組されて、阿蘇地域の自然を尊重した地域づくりや観光開発に取り組む財団法人阿蘇地域振興デザインセンターへと発展するのである。

阿蘇郡にはいくつかの部事務組合が存在するが、12町村すべてを構成団体とするのは阿蘇広域行政事務組合(昭和63年設置)である。この組合は、消防・し尿処理・ゴミ処理・火葬場・老人ホーム・在宅介護支援・デイサービス・検診などの業務を行なっており、行政上の地域の統一性を生み出している。しかし、観光・リゾート関係の施策は各町村単位で行なわれ、その広域連携は従来はなく、阿蘇地域振興デザインセンターの活動に期待されるところが大きいのである。

 

1. 組織と地域の概要

 

(1) 組織の概要

 

まず、現在の阿蘇地域振興デザインセンター(以下「デザインセンター」と略称)の概要を表1に示そう。その組織形態は、熊本県および阿蘇郡の全12町村の出資による財団法人である。平成10年5月に、財団法人阿蘇環境デザインセンター(平成2年設立)が拡充改組され、また名称も変更されて、阿蘇地域振興デザインセンターとして発足した。基本財産は、阿蘇環境デザインセンターの2億4千万円を受けつぎ、10年〜14年の5年間で30億円とする計画である。なお、10年度末のそれは2億9,999万円である。

デザインセンターの主たる事業は、地域づくり、観光振興、環境・景観保全、情報発信の4本柱に関わるものである。その事業費規模は、基本財産収入(支出)を別にすると、10年度には3千5百万円余であった。

デザインセンターは、その発足の時点から県のイニシアチブが強く、行政組織=「官」の性格が濃厚である。

 

 

 

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