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神話の世界を描く出雲神楽が伝統芸能として各地に伝えられている。そのなかには比較的近年に復興されたものもあるが、出雲神話を共有し合う地域といってよいであろう。しかも加茂岩倉遺跡(加茂町)から49個に及ぶ銅鐸の他、銅剣、銅矛が出土し、これは夥しい数の銅剣が出土した、隣の斐川町の荒神谷遺跡とあわせて、この地域一帯の歴史の古さを物語っている。

雲南の地域性として注目されるのが、域内の各地で古代以来たたら製鉄が盛んに行われていた事実である。近代製鉄業の発展によっていずれも大正年間までは操業を停止したが、松江藩の鉄師頭取をつとめた絲原家や桜井家などの製鉄の足跡を示す記念館や展示施設が各地にあり、この地域独自の観光に役立っている。いってみれば神話とたたらの里だった。

製鉄とならんで和牛の生産も盛んで、出雲和牛の品質を誇って来た。木次町には魚問屋があって日本海の魚を加工し、仁多郡や飯石郡の町へおろしていた。

このような自然と歴史に彩られた地域ではあるが、中山間地帯の例にもれず、過疎化・高齢化が進み、広域化による問題解決の方策が求められていた。

 

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写真1 松江藩の鉄師頭取であった絲原家住宅の庭園(横田町)

 

2. 広域連合への歩み

 

雲南地域は古くから郡域をこえてつながりがあったが、昭和44年(1969)、広域市町村圏制度により、大原郡・仁多町の5町は松江地区広域市町村圏に、飯石郡の4町は出雲地区広域市町村圏に分属することになった。この広域市町村圏制度は、有力都市を含むことで活力のある地域にしようという試みであり、島根県の場合は、隠岐を含めて6つの広域市町村圏にまとめられた。

 

 

 

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