世界的レベルのアーティストの参加によるステージ(拠点地域)づくりは特に印象的だ。ユニークな広域連携事業として注目したい。この事業に取り組む高揚した気分が地域にあふれているのを感じた。この優れた構想を練り上げた人たちの知恵とセンスがすばらしい。やはり、地域づくりは“人”である。
(3) 「交流の道」(花の道)にも注目したい。各地域のステージ、施設、観光資源などを有機的に結び、回遊性を持たせるための交流の道を整備し、住民参加で沿道にみんなで花を植え、美しい交流ネットワークをつくる“花の道”づくりである。
花のまちづくりは、全国コンクールが平成12年に第10回を迎えるなど全国的な広がりをみせているが、広域連携による例は珍しい。花のまちづくりは、単なる花いっぱい運動にとどまらず、環境、住民の地域参加など地域づくりへの波及効果が多面的で、地域の基礎体力づくりに大きく貢献している。妻有の広域的な総合プロジェクトの中で、“花”がどんな役割を果たすか、広域圏のまちづくりへの期待を込めて見守りたい。
(4) あえて感想として言えば、このプロジェクト構想はユニークなだけに少し難しくて分かりにくいところがある。例えば、1]事業の特色である「アート」とは、美術館で見る芸術品のことではなく、「人が自然とかかわるための技術をアートと呼ぶ」というくだり、2]これも大き特色である「ステージ」とは、各市町村に整備される地域活性化拠点であり、「自然体感型ふれあい文化施設」である-などは、主旨を理解するのに解説が必要である。住民参加の成熟度が重要なカギになると思われる事業だけに、この構想の難しさが住民の理解と実践に当たっての邪魔にならなければいいがと思う。
また、10年計画による息の長い長期継続事業であり、巨額の経費を要すること、アーティストの協力が必要な事業であることを考えると、息切れしないように、国、県、関係団体の理解と協力がぜひとも必要と思われる。
(5) ちょうどタイミングとして事業の柱である「大地の芸術祭」の第1回が2000年7月から始まる。ミレニアムにふさわしいタイミングとスケールの広域連携事業として、成功を願ってやまない。核となるステージの完成後、できればこの地域を再訪して、アートネックレスのたたずまいをこの目で確かめてみたいと思う。妻有の“挑戦”にエールを送る。