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タクシー運賃の多様化

タクシー運賃は、道路運送法第9条によって運輸大臣の認可制となっている。同法9条の認可基準は、(1)適正な原価(適正利潤を含む)を償うこと、(2)不当な差別の禁止、(3)旅客負担力の考慮、(4)不当な競争の排除等であるが、タクシーについては、1955年7月の運輸省自動車局通達によって同一地域同一運賃が示され、長い間この方針が原則的に適用されてきた(通達自体はその後改定されている)。しかし、規制緩和に向けての議論の高まり、京都MKタクシーの値下げ申請却下に関する訴訟の問題(同社の値下げ申請に対し、近畿陸運局が同一地域同一運賃の原則からこれを却下したことについての妥当性を問う裁判で、第一審で行政側敗訴、第二審で和解)等を背景に、運賃多様化の要請が高まった。さらに、1995年3月の「規制緩和推進計画」において、利用者の選択の幅を拡大するため、その多様化の必要性が指摘された(同推進計画、96年3月および97年3月の改定でも同様の指摘あり)。運輸省は、1993年の運輸政策審議会答申「今後のタクシー事業のあり方について」に基づいて、東京・大阪を中心とする大都市において、同一地域同一運賃の原則を破棄することとしていたが、さらに、1995年9月には「タクシー運賃の在り方に関する研究会」を設置、(1)総括原価方式を維持したうえで運賃多様化を図る案、(2)ゾーン制ないしフォ一ク運賃(複数運賃を認可しそのいずれかを事業者が選択する)を導入する案、(3)上限制運賃を導入する案などの検討がなされた。一方、実務的には、運賃ブロック(運賃の認可単位)内の複数運賃を許容する一方、割引運賃等の設定の弾力化を行い、1997年度からはゾーン運賃制(別項参照)が採用された。この結果、1997年3月末で、全国77の運賃ブロックのうち35ブロックで多重運賃となった。(特に、大阪、名古屋、京都においてはかなりの車両の運賃が多様化)。97年4月以降は消費税引き上げにともない、課税事業者と免税事業者で二重化(課税事業者は税率引き上げ分を運賃に転嫁したのに対し、免税事業者は運賃据え置き)したため、ほとんどの地域で運賃は多重化した。また、割引運賃等の設定の弾力化が行われ、遠距離割引、ノーマイカーデー割引、定額運賃前払い割引、初乗りクーポン割引、高齢者初乗りクーポン割引(以上は、大阪の事例)等の多様な運賃が出現、さらに東京では初乗り距離を短縮した運賃(いわゆる340円タクシー)が登場した。

 

 

 

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