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平均原価方式

平均原価方式は、主としてタクシー運賃に同一地域同一運賃の原則が適用されていた時代に用いられていた原価計算の手法である。同一地域同一運賃原則のもとでは、タクシー運賃の改定は運賃ブロックごとに行われていた。この際、当該地域の運賃改定が必要かどうかについては、先ず、事業者の規模、運営の継続性、労働争議の有無等を基準として標準能率事業者が抽出され、その事業者について現行の運賃で収支を算定した場合の収支率の加重平均(適正利潤を含む)が100以下の場合、あるいは翌年の加重平均が100以下と見込まれる場合に認められるものとなっていた。この基準で運賃改定が必要であるとされた場合、さらに標準原価事業者の中から原価計算対象事業者が選定される。原価計算対象事業者は、標準能率事業者の車両規模別にそれぞれ50%を抽出することが原則であり、最低数は10社、最大数は30社である。平均原価方式は、原価計算対象事業者の原価の平均値をその運賃ブロックの原価とみなし、運賃改定による増収率が原価計算の結果による所要増収率と等しくなるように運賃改定が認可されることになる。平均原価方式のメリットは、原価が平均原価以上の高コスト事業者に対して費用節約のインセンティブを与え、低コスト事業者に対しては余剰金という形でのある種の褒賞を与えることで、極めて単純なヤードスティック規制となっている。一方、平均原価方式は、基本的に同一地域同一運賃を前提として行われてきたために、運賃の画一性が問題とされてきた。ただし、近年のタクシー運賃の多様化に向けての施策、なかでもゾーン運賃制の導入において、平均原価が上限の設定に用いられるようになり、効率化のインセンティブの付与と運賃の多様化が両立することとなった。

 

 

 

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