3-4 デンマークにおけるコンセンサス会議の事例
行政改革手法ではないが、デンマークにおいては「コンセンサス会議」という名称で、医療や情報化など、専門的な知識が必要な分野においても一般の市民をパネルとして合意(コンセンサス)を導き出す取組が行われており、今後、行政機関が情報化を進めるにあたって市民の意見を取り入れていく際のヒントになると思われるため、これを紹介することにする。
(1) コンセンサス会議
飛躍的に進歩した今日の科学技術は、その高度な専門性のために市民から遊離してしまい、科学技術者の手にすべて委ねられている。しかしながら、遺伝子治療や情報化など、科学技術のあり方は市民生活に大きな影響力を持っているため、専門知識を持たない市民への情報公開、意思決定プロセスヘの参加が課題になっている。こうした背景から、1987年にデンマークで「コンセンサス会議」の試みが開始された。公募で選ばれた市民によるパネルが課題となるテーマ(遺伝子操作技術など)について学習し、専門家の説明を受け、知識を深めながら、討論を重ね、パネルとしての合意(コンセンサス)を導き出し、マスメディアなどで広く公表する。そして、この導き出されたコンセンサスは、「最新の民主的議論」として、大きな政治的影響力を持つようになるというものである。なお、このコンセンサス会議に参加する市民は、市民の代表に位置付けられているのではない。市民の代表はあくまでも議員ということである。また、コンセンサス会議は投票や世論調査とも異なる。市民パネルは、様々な属性(性別、年齢、職業、住所、学歴)を持つ多様な市民が集まった場合、どのような議論がなされ、どのような合意が形成されていくかを示すモデルとなるのである。このようなコンセンサス会議は、従来型の間接民主主義ではなく、住民投票などの直接民主主義とも異なる。官僚や一部の専門家に社会的意思決定を委ねるのではなく、社会各層の意思を先駆的・積極的に政策に反映させていく、「アクティブデモクラシー」とも称すべき、新しい社会政策プロセスである、といえる。
コンセンサス会議のメリットは主に次の3点である。
1] 市民参加の促進
一般の人々が、専門家に情報や知識を付与されながら、問題を考えていく中で、「自分達でもなんとか対処できる」という自信を持ち、専門家が支配する領域への市民参加を促すきっかけになる。