(4) CS以降のマーケティング手法
ここまで、消費者の満足度に基づく事業戦略である「CS戦略」が企業活動において必須となっていることを示したが、ここに至るまでは、戦後のモノ不足の時代における生産性の追求、昭和30年代のテレビ番組やCM等のメディアを通じたセールスプロモーションによる消費者の需要の喚起、昭和40年代以降の企業側からの視点による消費者ニーズの分析及びそれをもとにしたマーケティング展開という多様な変遷を経ている。今後も、顧客満足を軸としたマーケティングの考え方は不変と想定されるが、今日のように顧客ニーズが多様化・複雑化した状態では、顧客全体を一つの塊としてとらえる従来のCS手法に限界が生じているため、顧客に対してより一層のきめ細かい対応が必要となっている。その解決策として現在、企業と顧客との取引関係を長期的に捉え、商品・サービスを媒介として売り手と買い手が対話しながら価値観を共創する「関係性マーケティング」や「CRM (Customer Relationship Management)」という概念が注目されている。
例えば、顧客の潜在的ニーズがありながら現状として存在しない商品・サービスに関してはCS調査では把握できず、顧客に対するアンケート等でニーズを収集しても、顧客から完成されたコンセプトが上がってくる可能性は低い。しかし、企業と顧客が密接にコミュニケーションを行えれば、顧客のニーズを企業が具体化してフィードバックし、さらに顧客が意見を加えることにより、新たな商品・サービスを生み出すことが可能となる。この提供側と受け手側が価値観を協創するという考え方は、行政機関と国民との関係においても有効と想定されるが、少なくともCS評価手法を導入し、施策に対する国民満足度を把握して施策に反映させる仕組みを構築した後の課題と考えられる。