第1章
CSに関する動向調査
近年、財政難や地方分権の進展などを背景として、国の機関や地方公共団体においては、行政評価制度を導入する動きが活発化している。これは、行政機関が施策や事業を評価し、その結果を国民に公開する仕組みであり、担当者の意識改革や事業の改善を推進する行財政改革の有効な手段となることが期待される。事業評価は、民間企業においては経営に必須の要素であることから導入が進んでおり、行政機関においても民間企業のノウハウを活用することにより、効率的かつ効果的な行政評価の実現が期待される。
民間企業の事業評価においては顧客満足度「CS (Customer Satisfaction)」が重要な評価基準となるが、これは企業側から消費者のニーズを想定するだけでなく、消費者の観点での自社の商品・サービスの評価を基に、顧客の満足と企業利益を実現するものであり、顧客を国民に置き換えることにより行政機関にも適用可能となる。
本章では、民間企業におけるCS手法の動向及び行政機関への適用について整理した結果を示す。
1-1 民間企業におけるCS評価の現状と動向
ここでは、民間企業におけるCSの概念を整理して、その動向について整理することとする。
1-1-1 民間企業におけるCS評価の概要
(1) CS登場の背景
日本においては80年代の終わり頃からCSが経営課題として導入が始まっているが、その時代背景としては、メディアの進展により個人でも商品やサービスに関する情報を容易に入手できるようになり、消費者の商品・サービスに対する感覚が洗練されたこと、必要な消費財はほとんどの家庭に行き渡り、消費者が「気に入らなければ買わない」というスタンスで商品やサービスを厳しく選別するようになったこと等が挙げられる。