はじめに
近年、国や地方公共団体においては情報システムの導入が一層、進み、インターネット、街頭端末、電話やファクシミリを使用した行政情報サービスも国民の間にも浸透しつつある。これらの官民接点となる情報システムは、情報機器の利用に慣れた若年層や大企業にとっては便利であるが、高齢者や中小企業等、情報機器の利用が進んでいない国民層においては利用者との情報格差が拡大するという問題点もある。しかし、初心者が容易に使用できるユーザインタフェースは熟練者にとって冗長である可能性もあり、全ての国民にとって満足を得られる官民接点情報システムを実現することは容易ではない。
これに対し、従来から民間企業では顧客満足度(CS: Customer Satisfaction)に基づく経営手法が重視されている。これは、国民のニーズの多様化、商品・サービスの多様化に伴って発生していた企業側が想定する顧客ニーズと実際の顧客ニーズとの乖離を解消する手法として有効であり、国や地方公共団体においても行政評価の一環として導入が進みつつある。官民接点情報システムに関しても、CS評価手法の適用により機能や性能、操作性等の改善が進めば、国民のニーズを反映したシステムの実現が期待される。
このような状況を踏まえ、本調査研究においては、民間企業におけるCS評価の現状、国内外行政機関における住民満足度を取り入れた施策の現状及び誰もが利用しやすい官民接点情報システムの先進事例調査を実施するとともに、官民接点情報システムのCS評価上のポイントの整理、課題の明確化及びCS評価適用イメージについて検討を行った。また、行政機関におけるCS評価への官民接点情報システムの活用という観点でも調査分析を行い、官民接点情報システムの普及・導入効果向上とCS調査の高度化・効率化を両立する方策について提案を行っている。
本調査研究は、「行政情報システム研究開発等」事業の一環として実施されたものである。
なお、本調査研究の企画立案、とりまとめ等に際しては、学識経験者、行政実務の経験者及び行政情報システム研究所をもって構成する委員会の審議を経て、また委細にわたる調査研究に関しては、「株式会社 三菱総合研究所」の協力を得たものである。
調査にご協力頂いた関係者各位に謝意を表するとともに、本報告書が各機関の業務推進の一助となれば幸いである。
平成12年3月
社団法人 行政情報システム研究所