したがって、仮説的モデルの設定によって概算してゆくことが必要となる。また、入居者の変化などについては、納税者の自己申告はもちろん、事業所登録、建築許可申請、諸許認可申請など他の行政機関が所有するデータを参考にして追跡する他、さまざまな情報をもとに職員による現地調査をも実施している。アムステルダム市内の他機関とのデータ、情報の共有については、情報システム・ネットワークを形成して対応している。評価、課税、徴税のプロセスも高度にネットワーク化されており、99年に行われた不動産税担当部局の組織改編においては、情報処理を専門に扱う課が独立に設けられた。
現在の組織編成は、外部との接点として評価・証明課、法人・組織課、個人課の3課が配されており、内部的な機構としては財務・企画・監査課、法務課、人事・組織課、そして情報処理課が設けられている。窓口となる諸課の分類は、従来の組織が機能によって編成されていたのに対し、法人・組織課と個人課という対象による分類となり、顧客志向をめざす姿勢が明確に打ち出されている。
課税、徴税の過程についても、アムステルダム市は特徴的なシステムで運営されている。使用者、所有者の特定は、毎年1月1日時点において、住民登録、商工会議所の登記などから実態を割り出して行う。前者については税務局とのオンライン化が進んでおり、データの共有、調査が容易であるが、後者についてはまだオンライン化されていない。また、不動産の登記事務所は国の機関であるが、例えば建築申請、許認可申請などは市の機関に行われることとなっており、これらの関連データを照合するのを困難にしている。納税通知書は、同時期に一斉に送付されるのではなく、調査や確認、そしてまた評価替えが済んだ時点で順次送付されていく。したがって納期は、一年間のうちの特定の時期ではなく、納税者が通知書を受け取ってから一定期間後となる。
オランダの税制を特徴づけている原則は、高度な分権化と情報化である。しかし、基準はすべて国が定めており、実際にはそれほど自由度は高くない。また、そもそも不動産の所有という発想がなく、住宅のほとんどが賃貸であり、移動も少なく、売買に関するデータはほとんどないという状況下において市場価値を求める必要があるため、基準物件について実際に調査を行い、それとの関係の中で算定してゆくというモデルを開発した点は特徴的である。税務事務については、納税者の立場に立った組織に再編し、顧客志向を強調するなど機構面で革新的な変化が見られるのに対して、通知の配布時期、方法、納税期限など徴税プロセスにおいては改善の余地が残されているといえよう。