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ヨーロッパの統合はまた、保険、医療、金融などの諸分野における市場の統合、グローバル化を意味する。いずれの国にも多国籍企業が進出しており、サービス、価格などの水準に関して、他国と競争関係に入りつつある。提供されるサービスは、それが公的セクター、私的セクターのいずれによるかにかかわらず、すべて市場における競争に晒されることになり、個々の企業、団体の経営の合理化は、公私を問わず重要な課題となっている。これまでコスト・パフォーマンスをあまり重視していなかった福祉行政を民営化、あるいは一部を私的セクターに委ねることなども考慮されるようになったが、これはヨーロッパ統合のもたらした成果であるともいえよう。結果的には、市民をサービスのクライエントと捉え、その満足度の向上とコスト・パフォーマンスの追求の中でよりよいサービスの提供がはかられるようになる。またそのためには、地方自治体、特にサービスの単位である州が、それぞれのニーズに基づいた計画を作成し、これにしたがって政策を実施することが求められる。これは実際、IRAPの導入において各州に要請された。

イタリアの場合、ヨーロッパ統合は、財政赤字の削減からはじまり、システムの透明性、市場志向、合理性、効率性、そしてクライエント志向の行政サービスの提供を要請するに至った。2001年以降、州を単位とする行財政の分権化がさらに展開する予定である。

 

ヨーロッパ統合の影響を強く受けて変化している欧州諸国において、財政の健全化や税制の統合などの共通のアジェンダのもと、その行財政システムは地方分権化の方向にある。EU統合がもたらした政治的、経済的、社会的な統合のベクトルは、国家の重要性を相対的に低くしたが、同時に自治体間競争を喚起した。このような変化の中で、行財政構造そのものの地方分権化は、きわめて重要な課題である。

これらの特徴は確かに、日本のおかれている政治的、経済的、社会的状況を考慮するならば、すべてが意味を持つものではないかもしれない。しかし、経済のグローバル化、規制緩和、行政に対する考え方の変化が見られる以上、日本に共通の傾向がないとは言えないであろう。また、地方分権化が今後、ますます重要となることは明らかである。その中で、権限の委譲や政治的な地方分権化を実質化し、その変化を担保するのは、行政構造の改革と財政の保障である。財政の分権化という考え方は、日本の今後の財政構造にとっても重要なのではないだろうか。

 

 

 

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