特に財政赤字、公的債務に関しては、EUROに参加するための基準が定められていたことから、これが具体的な目標値となった。
例えばイタリアの場合、EU統合は、公私両セクターの組織、パフォーマンスにさまざまな影響を与えてきた。統合ヨーロッパの政治・経済システムに参加するために必要条件とされた行財政システムの透明性の保障は、さまざまな方法によって実現されつつある。行政権限の分権化とアカウンタビリティの向上が進められていると同時に、いわゆる財政連邦主義(federalismo fiscale)を実現するための財政の分権化が求められており、それによって行政機能の分権化を補完することが期待される。財政改革の背景にはまた、ヨーロッパの市場、経済統合を控えて、財政赤字を対GDP比3%以内にするという、統合通貨ユー口に参加する必要条件を実現するため、イタリアはその財政構造を再建する必要に迫られたという状況があった。
96年に誕生したプローディ(R. Prodi)の内閣による財政改革は、財政赤字の減少と安定、インフレ率の下降と安定を実現して、当初の目的を果たしたのみならず、財政連邦主義の思想に基づき、州生産活動税(IRAP, Imposta Regionale sulle Attivit Produttive)の導入に代表される租税制度の合理化と分権化に向けた改革に先鞭をつけた。プローディ政権に続き、ダレーマ政権(M. D'Alema)政権でも財務相を務めるヴィスコ(V. Visco)を中心に進められている財政改革は、イタリアの財政赤字の縮小という課題を越えて、財政連邦主義を実現するため、さまざまな方法論を導入している。租税制度の整備はもちろん、財政構造の健全化と分権化がめざされており、元行政機能(改革)大臣バッサニーニ(F. Bassanini)らによって始められた地方分権、行政改革によって実現しつつある行政機能の分権化を、地方自治体の自主財源の強化によって、財政面から補完するものである。
財政改革は、分権化の要請とともにまた、租税システムの改編、特にその単純化、簡素化を重要な背景の一つとしている。州生産活動税IRAPの導入には、財政の連邦化(分権化)の促進と同時に、複雑な税を統廃合し合理化する必要性、企業の自己資本率を高める要請、そして全国保健基金、および州ごとに徴収されるにもかかわらず中央主権的に運営されていた保健分担金によって営まれていた保健医療行政の改革、分権化、という目的がある。この中で、保健医療行政の実際の単位である州の自主財源の強化が要請されるが、将来的には、他の行政機能の州への委譲、バッサニーニ法に保障される行政の情報化を通じて、より合理的に徴税、財政調整が実施されることが期待されている。