もっとも進んだ事例を持つフィンランド、カナダなどに比べ、国民総背番号制に抵抗感のある英国などでは日本と同様、カードによる個人情報一元管理は未だ議論の域を出ていない。すなわち諸外国におけるスマートカードの導入に関しては、国民総背番号制をべースにする社会基盤が整っているか否かで大きく進展度合いが異なる。
スマートカード導入に積極的な国においては、より実際的な個人情報電子化のための技術論が研究されており、一定の成果を上げている。カード導入にあたって、国としてのGPKI(政府公開鍵基盤)の整備を重視し、カード自体の全面的な普及の前に、技術的なサービス仕様の確立に力を注いでいる国が多く見受けられる。
個人データの記録・読み取り方式などについても、市の一部サービスのように、性別や年齢などのサービス利用要件を満たすことがわかれば、その他の個人情報(氏名など)は読み取らないなど、情報そのものの管理方式についてもきめ細かい設計がなされている。同様の理由からか、もっとも進んでいるフィンランドにおいても、銀行カードなどとの統合化については、今後のプランの中に含まれており現時点では実現していない。国民全員への配布についても同様である。
3-1-3 行政サービス情報化の方法論
(1)民間へのアウトソーシング
行政サービス情報化のもう一つの側面として、行政サービスの抜本的なリエンジニアリングを行うことでの「小さな政府」の実現がある。サービス情報化によって手続きが電子化され、窓口などの人の手を介さずサービス提供を可能にすることが一般的に行われているが、それを機会に行政サービスを一部民間などに委託する「アウトソーシング」が同時に推進される場合が多い。主に情報システム構築・運用分野において、民間へのアウトソーシングが活発化している。
南オーストラリア州政府のアメリカの情報サービス会社エレクトロニック・データ・システムズ(EDS)社へのアウトソーシングなどが有名である。人材もハードも含めた周辺的な業務を丸ごと外部専門機関に委託し、行政内の資源は本業に集中した例である。行政サービスの中にはアウトソーシングに向かない業務も多いが、組織のスリム化とサービス改善が急務である各国政府にあっては、オーストラリアの取り組みは今後もモニタリングされていくべき試みである。