たとえば、急速に友達になりすぎてしまって、ベッドの中のことまで話してしまって、そうするといったん歯車が噛み合わなくなり始めたら、もう同じ団地には住んでいられなくなるということになってしまった。そういう意味では、時間をかけて言葉遣いによって相手との距離を測っていくということも大事だと思います。それは医療関係者と患者との間でも、また家族との関わりの中でも必要なことだと思います。
身体の触れ合いと心の和み
これは身体的な接触でも同じです。人間も含めて動物は肌の触れ合いがないと生きられないという事実があります。赤ちゃんが何より安心できるのは母親にだっこされているときです。老人ホームのお年寄りが何となく生き生きとした雰囲気がなくなってしまって病気がちになるなどというのは、やはり自分のことを気にかけてくれている人による刺激が少なくなるからではないでしょうか。
身体的な接触だけではなく、声をかけるとか、実際にその人の目を見てきちんと話す、あなたがそこにいるのを心にかけていますというシグナルが必要になるわけです。ペットを飼うと心が和むといいますが、人間の触れ合いが得られないと、せめてペットとの触れ合いで温かみを得たいというのがあるのかもしれません。自分の存在を認めてもらうことは、人間にとって空気・水・食物と同じくらいに重要なことなのです。
十分な配慮と思いやりをどう具体化するか。大切な課題だと思います。