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ですから異文化についていろんなことを知るためには、言葉もそうですが、言葉以前のメッセージがわかるということが大事です。そしてこれは実は異文化だけではなく、日本人が日本語を話してわかり合えているつもりでも、わからないことが起こってくるのは、言葉だけにとらわれてしまって、その裏にある気持ちを見落としていたということがあるかもしれません。

先ほど、言葉で伝わるのは35%といいましたが、これは楽観的すぎて、実はもっと少ないのではないかといわれているのは、自分では気づかずに発している情報量がそれだけ多いということでもあるのです。

 

相手との距離

 

いま、お隣との距離はどのくらいありますか。E・T・ホールという文化人類学者は、人の気持ちは、その人が物理的に相手との間におく距離によって決まってくるというおもしろい観察をしています。

そういう観察をしたほかの学者に言わせると、人は自分の周辺に半径60cmくらいの目に見えない壁のようなものを持っていて、その中が自分の領域だといいます。ですから、その領域の中にほかの人が入ってくると、何となく気になる。それを実験するためには、次にレストランに行かれたときに、お話をしながら、あなたの水の入ったコップをそれとなく相手のほうに押し出してみる。話をしながら相手は何気なくそれを押し戻してくるのだそうです(笑い)。私のほうに入れてはいやだとはっきり意識はしていないのですが、何となく気になるのですね。

 

 

 

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