日本財団 図書館


体積も圧迫感を与える

 

では、親が子供に対してなぜそんなに大きな力を持つのか。子供心に親に頼らなければ生きていかれないという本能的なものもあるでしょうが、もうひとつは物理的な力もあります。これを計算した心理学者によりますと、生後2ヵ月の赤ちゃんと、平均身長・体重の母親とで比較しますと、母親は赤ちゃんの81倍の力を持っているそうです。ですからお相撲さんの武蔵丸か曙のような人が迫ってくるときのこちら側の危機感というのを考えれば、赤ちゃんにとって母親はいかに力を持っているかということがおわかりになりますね。それから2歳の子供にとって母親は16倍の力を持っているという計算があります。そして3歳と4歳の男の子、1歳違いでもお兄ちゃんのほうは弟の3倍の力があるといわれています。

そういう意味では、実際に身体的な力が強いというその人に守ってもらえば子供は安心できますが、逆に自分がこころから頼っている人、しかも自分の81倍の力を持つ親から虐待されたとき、からだの傷だけではなくこころにもいかに深い傷を残すかがおわかりいただけると思います。

いずれにしろ、子供が大きなもの、とくに頼りたい親に対して持った気持ちは、大人になってからも私たちの中に残っていて、しかも見上げた視線になるときはどうも子供の気持ちになりやすいということを覚えていただきたいと思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION