日本財団 図書館


これはベッドの上に寝ている患者さんの目線もそうですし、それに対応するときのこちら側の目線ということもあるわけです。

ですから、患者とのやりとりの中で、「今日は気分はどうですか」と聞くときに、あなたがどういう目線でどういう態度をとっているかによって、相手の反応はずいぶん違うと思います。あの患者は甘えて言っていると思われるときには、どうもわれわれの側が甘えさせるような雰囲気をつくっている可能性があるかもしれません。大体、病院という建物が依存心を強めるものを内蔵しています。普段着ているものを脱いでこれを着なさいとか、お通じがあったかなどという細かいことまでチェックされる。ふつうの生活の中ではそんなことはありません。それにまたきちんと従うような雰囲気をつくっておかないと、管理上いろいろと面倒なことがあるのかもしれません。そういうようにするからこそ、病院のメリットもあるのかもしれません。ただ、そういう戦略がありながらも、患者が甘えている、患者が悪いということになってしまう可能性がある。そこに、全体を把握していない、見落としていることがあるような気がします。

言われたことをきちんと聞き分ける、いい子というのがいい患者とされている中で、患者はますます依存する気持ちになりがちです。「どうですか、気分は」と言うと、「痛いのです……」と言いがちなのはおわかりでしょう。

ですから、患者と一緒にプランを立てたりするときには、患者と同じ目の高さで話し合いをすることがたいへん大事だということです。

視線を変えるとか、目の高さ、距離をどうおくか、というような環境設定で患者との関わりの質が変わってくるということを覚えていただきたいと思います。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION