上から見下ろす視線のときは、親が叱るということもそうでしょうし、同時に面倒をみる視線でもあるわけです。かがみ込んで「どうなってる?」って聞かれたら、患者は「大変つらいの」と本音を言いたくなりますね。
法廷の席でも、キリスト像にしても大仏像にしても、すべてこちらから見上げるようになっています。それから歌手や俳優などのファンも、「カッコいい!」というときは見上げていますよね。ですから、これを実際の生活の中でどう使うかといえば、たとえば子供を叱ろうと思ったら、上のほうからきちんと叱る姿勢でないと効果は少ないのです。「そんなことではダメじゃないの!」と見上げるようにして言っても「あ、パパ、頭が薄くなった」(笑い)なんて言われるのがオチだったりしますから、本当に叱ろうと思ったら、「そこに座りなさいッ」と、言ってることとやってることがきちんと一致するような形で叱る必要があるということです。
つまり、絶対守らなければいけないことを言うときは、権威のある立場で上からきちんと伝える。それから話し合いをするのであれば、相手が圧迫を覚えないような同じ目の高さで話し合うのが大事になると思います。こちらからお願いするというときには、見上げるような視線のほうが、相手はやっぱり面倒をみてあげなければと思うかもしれませんし、「そんなに頼まれるのなら人に迷惑をかけないように自分ができることは自分でやろう、そうでなくても看護婦さんは忙しくて大変なんだから」という患者の気持ちにアピールできるかもしれません。