8. 共依存から自立へ
バウンドリー回復の道のり
会合のあとで、よく、「バウンドリーの確立はいまからでも遅くないのでしょうか」と質問されます。私は、"Never too late !" 「容易とはいえませんが、決して遅すぎません」と明確に答えます。バウンドリーの芽が少し出るだけでも、その人の対人関係や精神状態に確実な変化が実感できます。つまり、自立することの体験です。
この最後の章では、バウンドリー回復、つまり自立のプロセスをお話します。自らの問題に適用しながら読んでいただきたいと思います。
1) まず、自分の問題を特定する
自らに何か問題があることを認めることです。このことは、必ずしも容易なことではありません。アルコール依存症の回復の第一歩は、自分ではアルコールを止めることができないことを認めることです。身体的な病気は容易に認められるのですが、心の問題とか、精神的・情緒的な問題はなかなか認めることが困難です。その分、解決できずに長く問題を抱えることになり、人間関係等も含めさまざまな領域に障害を知らずに与えていることがあります。
たとえば、子育ての中の主婦は、子どもを静かにさせるのに精一杯で、夜になるとぐったりとなっていました。時々、カッとなって手を上げてしまうこともあり、あとで罪悪感に悩んでしまうことも多かったのです。夫が少しでも口出しをすると、ヒステリックに反応し、夫も何も言えない状態で、夫婦間のコミュニケーションにも親密さが欠けるようになりました。