b. アルコール依存症への実践
アルコール依存症の人は、大体見境いがつかなくなるまで飲んできます。玄関に入った途端に、所かまわず寝てしまうでしょう。家族は、それを引っ張り上げて苦労して洋服を脱がせてあげます。朝、目が覚めてみるとどうやって家に帰ったのかもわからないにもかかわらず、ちゃんと布団にパジャマまで着せてもらって気持ちよく寝ているわけです。「これはいい・・・」と思い、今夜も飲もうという思いになるかもしれません。つまり、見境がつかなくなるまで飲んだ結果を体験させていないのです。
それではどうしたらよいのでしょうか。同じように飲んで帰ったら玄関から引っ張り上げてリビングルームまで入れてあげるぐらいは必要ですが、その後はほっておけばいいのです。そうしたら、朝起きたらどうなると思いますか。おそらく、おかしな格好で寝ているでしょうから、目が覚めたとき、体を動かすのもつらいかもしれません。まだ洋服は着たままですし、昨晩どんな状態で帰ってきたかも想像がつきます。
つまり、結果を体験するのです。それでも次の日も同じように飲んで帰ってきたら、同じ対応を毎回くり返せばいいのです。それでアルコールを飲まなくなるかどうかは別としても、おそらくブレーキにはなるだろうと思いますし、またアルコール依存的な生活から回復するためにも、このような対応をするのが最も早いでしょう。
決してそのときに、体のふしぶしが痛くなって朝目を覚ましたとしても、そのときに、「ほらごらんなさい」とは絶対に言ってはいけません。それを言ってしまったら、「原因・結果の原則」以外のストレスが余分に体験させられてしまうために、純粋にこの原則が体験できないため、その効果を失ってしまいます。何も言わないで「味噌汁ができました」と言ってやさしく朝食を出してあげるのです。