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いまの例は極端な話かもしれませんが、数百万円借金しても妻が返していれば、夫はどのような体験をしたことになるのでしょうか。数百万円を借金しても、返済する必要がないということです。現実にお金を使えば、自分のお金がそれだけなくなるはずです。借金すればあとで返済しなければなりません。このことがわかっていると、お金を使うことも、借金をすることも慎重になります。自分の収入とか、あるいは必要性を考えなければなりません。しかし、誰かが借金を返してくれるのならこの体験をしないわけですから、借金をいくらでもできるようになるのです。誰かが尻拭いをするということは自分の行動の結果を体験させなくすることですから、ギャンブルをくり返ししてしまうのです。したがって、共存的な関係というのは、ギャンブル型の依存行為を結果的には助けていることにもなります。たとえ貯金があったとしても、もし妻が「原因・結果の原則」を知っていたらどうするかというと、同情しつつも「では、この数百万円の借金をどうやってあなたが返すか一緒に考えましょう」と言うでしょう。そのためには、夫がいままで使っていた小遣いはほとんどなくなるでしょう。お昼も弁当になり、妻がつくってあげなければならないでしょう。そして毎月どの程度返せるのかをきちんと計算して、何年もかけて借金を返すという結果を体験すれば、繰り返す危険性は少なくなります。借金を抱えていれば、次は借りられません。しかし借金を返せば、またお金が借りられるようになります。原因をつくった人は、確実に結果を体験させるような関わり方をしていくときに、その人にもバウンドリーが形成されるようになるのです。これが「原因・結果の原則」です。アルコール依存症の方にもこの原則が有効です。

 

 

 

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