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b. 「ノー」を言える環境を作る

自分を失うことなく情緒的に結合している親子関係とはどのような関わりなのでしょうか。たとえば親と子でも意見の違うこともあります。特に2〜3歳になれば、子どもが「ノー」と言いたいこともあるでしょう。そのときに、「ノー」と言うことは、親(あるいは子どももそうなのですが)にとっては必ずしも悪いことではないのです。たとえばリンゴが好きか、トマトが好きかというときに、トマトが好きでリンゴを食べたくない場合、トマトには「ノー」と言って、リンゴには「イエス」と言います。そういう好みに関するレベルで子どもが「ノー」と言って、親の思いとは違う選択をしたりすると、親が子どもに拒絶的な態度をとってしまうなら、バウンドリー形成に反するようになります。そうすると、子どもは親の情緒的なよい関わりを維持していくために、自分を否定して「イエス」と言わなければならなくなり、バウンドリーの形成が困難になります。それでは共依存的になってしまうのです。共依存の中で同意者は「ノー」が言えないのです。友達が「ランチに行こう」と言ったら、自分のプランがあっても、一緒に行かないとその友人からどう思われるかが不安で行くと言ってしまいます。これは同意者であり、「ノー」が言えないのです。

「ノー」を言うとそれが拒絶としてとられてしまうような環境では、バウンドリーが形成されません。もちろん子どもとして絶対に親に従わなければならないこともたくさんあります。けれども、日常生活の中で、子どもの好み、子どもの独自性を認めていかなければならないような領域の中で、「ノー」と言うことによって情緒的に子どもに対して拒絶的になるような育て方ではなく、子どもの「ノー」を受け入れて、なおかつそれでよい関わりをもっていけるようにするのが、本当の意味でのバウンドリーを形成していくのです。

 

 

 

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