つまり、妻は夫の所有地に入ってきて、夫の本来の責任を代わって果たしていたのです。本来夫の責任ですから、妻が夫にガミガミ言ったとしても、夫を変えることは非常にむずかしいのです。人は相手を変えることはできません。でも自分の態度は変えることができます。もちろん、ここで私は彼女にバウンドリーの話をしたわけではなく、私がしたのは、これは夫の責任だから、妻はその中に入ってはいけませんということです。「これはご主人にまかせなければならないのです」と言ったのです。バウンドリーを越えてするのではなくて、まずそこでストップしなさいと言ったのです。ここは夫の責任範囲だから、やるかやらないかは夫にまかせなさい、ほっておきなさいという意味です。
そうすると夫はどうなるか。夫は自分の責任であることは潜在意識としてはわかっています。
妻は夫の領域に入ってはなりません。でも、決して夫に冷たい態度をとってはならないと言いました。そのような態度をとればとるほど、「そこ(相手の敷地内)に関心がありますよ」ということを言っているようなものです。ここが大切です。多くの人たちは、他人の家のことが気になってしょうがなく、それに手出しをしなくとも、態度に出てしまうのです。このような態度は、「これはいつかやってくれるな」という予告になるのです。つとめて明るくすることもありませんが、普通に接していればいいわけです。鉄則は、絶対に相手のことを気にしてはならないということです。よその家のごみですから。そう思ったら、あまり気にならなくなるのではないでしょうか。つまり、人間関係の問題にバウンドリーの概念を取り入れると問題の所在が逆になってしまうのです。
夫が問題だと考えていたことも、実は自分に問題があるという観点から対応すると、これらの夫婦間の問題を見直すことができるようになります。